みやび

偶然のみやびのレビュー・感想・評価

偶然(1982年製作の映画)
4.7
運命と人生を描き続けたクシシュトフ・キェシロフスキ監督の真骨頂とも呼ぶべき傑作。

人生の分岐点は「駅」であった。
主人公がとある列車に乗ろうとした結果から枝分かれする3つの運命が描き出される。
列車に乗れるか、警備員に制止されるか、列車に乗り損なうかによって、共産党員、地下出版を行う非合法組織の一員、医者という異なる使命を背負い、異なる女性と出会い、異なる人生を歩むことになる。
しかし最後には偶然にもひとつの残酷な運命に終着する。

「法」と「人」の関係を様々な視点から描くのはキェシロフスキらしさが全開。

元々彼は政治的な題材を扱ったドキュメンタリーを製作していた。
彼は自らが映画に進出した理由を「愛や死についての映画を作りたかったから」と語っている。
本作は彼の作品がドキュメンタリーという社会的な視点から段々と「愛」「人生」「死」などの個人的視点へと移行していく過程がよく見えてくる作品でもある。
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