Monsieurおむすび

戦争のない20日間のMonsieurおむすびのネタバレレビュー・内容・結末

戦争のない20日間(1976年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

第二次世界大戦下に、一人称で語られる従軍記者ロパーチンのわずかな休暇の記録。

戦闘態勢を解いた兵士たちが波打ち際で談笑している冒頭。明日から休暇の者も多く和やかな雰囲気の中にドイツの戦闘機が襲撃してくる。
難を逃れた面々の視線の先には、ただ一人命を落とした中尉が横たわっていた。
一体、戦争に於ける生と死を分つものはなんなのだろうか?
そんな疑問を抱きつつもロパーチンや他の兵士たちは自分の生を受け入れる。

疎開地タシケントへと向かう列車の中では他愛のない会話が続き、やがてロパーチンは戦死した中尉の形見を遺族へ届け、プロパガンダ映画の撮影現場を視察し、増産へ精を出す武器工場を表敬訪問する。

行きずりのロマンスに後ろ髪を引かれつつ、休暇を早く切り上げ前線へ戻る召集に応じる。

戻った前線で戦友と再会し、敵の砲火に晒されるロパーチン。その表情には、なぜか笑みをうかべていた。まるで、ここに戻る事をイメージしていたかのように。。。
果てのない敵地ベルリンまでの道のりに辟易しながら今日も歩みを止めない。

前線と疎開地のコントラストこそあれど、どちらにも戦争の脅威が色濃く陰を落とす。その中で人間らしい営みとユーモアを保とうとする葛藤。
無機質な死を美しく飾ろうとする、ある種の啓蒙映画への皮肉めいたゲルマンの徹底したリアリズム。きっとゲルマンなら凄惨な戦場のシーンもたくさん撮れたはず。

けれど、ゲルマンが選んだのは、各々が直面する戦禍でありながら、その血の通った心情。
文学性や実験的な画も含め非常に見応えがある。
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