コタロー

戦争のない20日間のコタローのレビュー・感想・評価

戦争のない20日間(1976年製作の映画)
5.0
 形式的・構造的には多数の人間たちのそれぞれの「戦争の物語」を匿名化した複数性のものとして描くことで「戦争映画」が陥りがちな情報の中心化・偏在化を避け、映画的倫理をもった距離感で相対化しているという点で「父親たちの星状旗」だとかゴダールやユイレの一部の映画と重なるところがある。しかしこの映画を傑作たらしめているのはゲルマンの被写体への倫理性や政治的態度によるものではなく、匿名化された住民たち・軍人たちの鳴らす音・光・写し取るカメラから生み出される距離の演出がほとんど奇跡的な域に達しているからではないだろうか。奇跡的というのは「道中の点検」の頃にはまだあったと思われるショットの配置化・構造化への欲求を超えたところで自然に撮れたとしか思えない場面の演出(例えば主人公と戦地に赴いた夫を待つ女性の窓越しに住民たちを乗せた汽車が走り去るシーンにおける照明設計)が存在しているからだ。
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