シンタロー

召使のシンタローのレビュー・感想・評価

召使(1963年製作の映画)
4.2
ジョセフ・ロージー監督×ダーク・ボガード&ジェームズ・フォックス主演。
アフリカから帰国したばかりのトニー。引っ越してきた高級アパートは家具もなく、改修の必要があった。貴族階級で悠々自適なトニーは家事が苦手で召使を雇おうとしていた。そこへ面接に来たのは中年でルックスの良いバレットという上品な男。すぐに気に入ったトニーは、住み込みでバレットを雇い、家事全般から身の回りの世話まで任せるようになる。トニーの婚約者スーザンはバレットを訝しみ、クビにするよう頼むが、そんな要求は受け入れられない程、替えのきかない存在になっていた。バレットは妹のヴェラを呼び寄せ、メイドとして共に働くようになるのだが…。
「地獄に堕ちた勇者ども」「愛の嵐」でダーク・ボガードにはまった頃に鑑賞して、更にどハマリしてしまったミステリーの名作。SMと同性愛をバックグラウンドに忍ばせた人間描写がゾクゾクする程スリリングで、自分は大好物です。トニー、バレット、スーザン、ヴェラの四重奏のような前篇は英国らしい上品な演出が光りますが、バレットのある告白からの後篇は退廃的で扇情的な世界観が広がり、もうたまらん。トニーとバレットの出逢い…面接で何人も断ったのにピンときてすぐに雇ったわけで…ハッキリ言葉にはしなかったけど…「料理以外にも君には…」絶妙な間と2人の視線…お互いに感じるナニかがあったのでしょう。きっと。後篇では包み隠さず、服従関係の逆転、SMの淫らな官能が露呈されていきます。バレットがどのタイミングで企んだのかが謎…目的はハッキリしてると思いますが、そこに愛情があったのか…そのあたりの隠された表現が、本作の中毒性なのかな、と思ってます。
主演のダーク・ボガードは、ヨーロッパ作品にこだわり続けてきたレジェンド的英国俳優。ジョセフ・ロージーとは公私に渡る長い関係を築き、彼との出逢いが甘い二枚目から演技派へ脱皮させたと言われてます。本作の腹に一物抱えた大胆な人物表現はあまりにも素晴らしく、以後度々性的に倒錯した役柄をこなすようになり、一部?で熱狂的支持を集めました。対するジェームズ・フォックスは、この時点ではほぼ新人でしたが、既に大活躍していたボガードとワンシチュエーションのような場面でも、臆せず見事な力演。ボガードとタイプの異なるルックスも絶妙にマッチしてました。ヴェラ役のサラ・マイルズもほぼ新人で、こちらはコケティッシュでビッチなキャラを厭味っぽく好演。2人共その後も活躍し、ロージーの先見性を感じさせます。
シンタロー

シンタロー