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男はつらいよ ぼくの伯父さんのQTakaのレビュー・感想・評価

4.0
恋の主人公は、寅さんから満男へ。
寅さんの家族愛が溢れるシリーズの始まり。
マドンナは、美少女”ゴクミ”。
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寅さんから満男への世代交代だった。
高校生・浪人生の”満男”と遠く名古屋へ引っ越しちゃった後輩の”泉”の恋物語。
寅さんももうふられ役を続ける歳じゃなくなったと言うことらしい。御歳61歳。
この年から、年2本から1本に減らすなど、寅さんシリーズの新たな門出だった。
恋の主人公が若返ることも、このシリーズにとって重要な頃だったのかもしれない。
そんな、フレッシュな”男はつらいよ”だった。
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満男(吉岡秀隆)を見守る寅次郎(渥美清)のまなざしがなんとも優しい。
恋い焦がれる泉(後藤久美子)ちゃんも、寅次郎にとって目が離せない若者の一人になる。
「この土地の言葉を覚えて、友達いっぱい作りな!」
優しさ溢れる寅さんの言葉。
と言って、寅さんに女っ気が無くなったのでは面白くない。
満男が泉ちゃんを追いかけて佐賀までやってきたところで、泉が世話になっている伯母さんの家にたどり着く。
この伯母さん寿子(檀ふみ)さんがもう一人のマドンナ。
寅さん、ちょっとだけイイ感じになるものの、そこまででしたけどね。
そこで、女性にはとことん優しい寅さん、そっとかける言葉がイイ。
寅さんの女性への思いは、この回からは、恋愛から親の愛情的な方向になってきたのかな。
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この物語の主人公は、若者二人。
満男は、浪人中で、ちょっと人生に一休み中。
それを大人たちはなかなか許してくれない。
そして、もう一つ泉ちゃんが気になってしょうがない。
及川泉は、親の離婚を目前にして、心を痛めている。
みんなで囲む食卓に憧れを抱き、寅屋の人々に憧れる。
そんな二人を中心に、虎屋のみんな、大人たちが右往左往するのだけれども…
当の若者二人は、大人が想うよりもずっとしっかりしているし、多くのことを感じているし、そして傷ついてもいる。
そんな二人を、一番よくわかってあげているのが寅次郎で、その寅さんが、周りの大人たちと若者の間を取り持っていたのかな。
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一口に”生き辛さ”と言うけども、そこをぶち破って、互いを認めあい、生きやすさを取り戻すのが、寅さんなのかもしれない。
その優しさの方向が、若者へ向けられた本作は、正に新しい”男はつらいよ”のスタートだった。
本作(第42作)に続いて、第43作を見た。
その感想は別に記すけど、さらに満男と泉ちゃんの話が続く。
新しいシリーズが始まったのだ。
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