義民伝兵衛と蝉時雨

イザベルの誘惑の義民伝兵衛と蝉時雨のネタバレレビュー・内容・結末

イザベルの誘惑(1985年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

嫉妬心、独占欲、愛憎、メンヘラ男の行き過ぎた愛情が生み出す根深い被害妄想、そして”好きな女性を虐める男性心理”の極地とも言うべき愛する妻へのいじましい精神攻撃。それは現代であればモラハラとも定義されるかも?
メンヘラ男のいじけた心が織りなす狂気的な愛は、妻の元恋人とその婚約者をも巻き込み、周りを混沌の渦へと引き摺り込んでいく。四角関係は修羅場と化していく。

しかし、行き着いたラストに発光する激愛の実り。
男の純愛は狂乱の果てに夫婦の絆をより一層深めるのだった...。
正しく、最後に愛は勝つ。
形はどうであれ、一途な純愛のパワーはその他を凌駕する。これは「TITANE/チタン」をも想起させる。

「家族生活」と同じくリアリティ溢れる繊細な心理描写が圧巻。いじけた人間の心理状態や、渇愛に苦しむ人間の破綻寸前の精神状態、その不安定な精神状態に巻き添えを食う周りの人々の精神的苦痛など、人間心理が写実的にものの見事に撮らえられている。そんな歪な愛の形を助長するようなカメラワークも印象的で、窓に雨が滴り落ちる場面や終盤の車に乗っている四人の場面など印象深い画も所々に。キャストも魅力が深く、シャルロット・ゲンズプールの登場にもテンションが上がった。