ベビーパウダー山崎

イザベルの誘惑のベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

イザベルの誘惑(1985年製作の映画)
4.0
軸はメンヘラ男女の痴話喧嘩。そこにもう一組の男と女、後半は女性の父と母も話に巻き込まれていく。三組のカップルをくっつけたり離したり、日常に散らばした人物の配置で物語をでっち上げている。寄り道として男が路上で牛と戯れる冒頭、あてもなく流離う映画を予期している。誰もが一方通行で、感情と愛情は重なり合わない。
長々ぐだぐだと薄暗いホテルを超えた終盤がとても良い。彼女のもとへと歩いていく。散々窮屈な画を見せてきてから走り、車に乗り、行動を起こす。えらく難しい会話のようで身勝手な独白はドワイヨンだが、それだけで終わらずしっかり動きでも見せてくるから間違いない作家。作り手の過剰なナルシシズムは確かにあるが、キャラクターがやけに幼く、道化のように振る舞うことで感情を爆発させる「言い訳」を与えているようにも思える。
これだけ踏み込んで「私とあなた」の映画を自己完結させられると、こちら側が他人事のような面して映画を見るわけにはいかないというか、裸になって抱き合うラストとか唖然としながらも感心してしまった。映画は理屈じゃない。ドワイヨンを見てゴダールっぽいと思ったのは初めて、あとアサイヤスの初期とか。
俺が見たのはボロボロのビデオ、暗がりで顔は潰れ誰が誰だが分からないくだりも多々あったので、いつかスクリーンで見返したい。