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飼育のTSのレビュー・感想・評価

飼育(1961年製作の映画)
3.6
【ぶつけられる憎しみ】76点
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監督:大島渚
製作国:日本
ジャンル:ドラマ
収録時間:105分
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名画40パーオフでしたので購入。こういうシンプルなタイトルに不穏なジャケットには妙に惹かれてしまいます。捕虜となった黒人に憎悪を抱かせていくとある村人たちの話。大島渚監督の独立作であるとともに問題作ともいわれている今作は中々の見応えでありました。

昭和20年の夏。アメリカの戦闘機が墜落したものの、何とか生き延びた黒人兵士は村の猟用の罠にかかり、捕虜にされる。最初こそ彼を珍しがっていた村人たちであったが。。

どうしようもない憎しみや悲しみを自分とは異なる存在にぶつけることはよくあることです。かのユダヤ人も歴史的に迫害の対象とされてきましたが、14世紀の黒死病など、事あるごとにユダヤ人が悪魔であるとされ迫害、もしくは処刑されてきました。また、1923年に発生した関東大震災においても、そのどうしようもない感情を在日朝鮮人に向けたという記録が残っているのですから恐ろしい。今作においても、村で度々不幸が発生し、その疫病神こそこの黒人捕虜であるとされるのです。歴史的にこういうことはよく行われてきたため、今更驚くことではないのですが、実際に黒人を題材として村人が豹変していくのを見せつけられるとさぞ生々しいです。かくして黒人の「飼育」が始まるわけですが、物語は思いもよらない方向に進んでいきます。

黒人を言わずもがな蔑ろにしているため、問題作と言われても致し方ない。しかし、これこそが悲しきかな、人間の本性でもあるのです。虚ろな目をしてナタを持ち黒人に襲いかかる少年の方がよっぽど恐ろしかったです。戦時中の村人たちの不安を見事に具現化した作品といえそうです。
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