べらし

コルチャック先生のべらしのレビュー・感想・評価

コルチャック先生(1990年製作の映画)
3.7
歴史映画や戦争映画において当時の記録フッテージを挿入するのはよく見られる演出だが、「視点」の問題について自覚的な例は殆ど見られないと言っていいだろう
たとえば空襲で焼け落ちるワルシャワの街を撮るのはポーランドのカメラマンであり、惨憺たるユダヤ人ゲットーを記録するのは顔をしかめたナチのカメラマンであるということは本来当然なんだが、それがしばしば目くるめくスペクタクルの中で曖昧にされがちということ……

この映画ではその撮影する主体をしつこく映し出すことで、そうやって他者の視点を一種の権威づけとして剽窃することに対して強い自覚を促している
これの後で米軍のカラー映像を何の疑問もなく使用するわが国の「反戦」特攻隊映画を観たら失笑を禁じ得ないだろう

そういうことで、ワイダの映画では初めて圧倒された
あまりそういう理由で圧倒される人間はいないと思うが
べらし

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