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コルチャック先生のbennoのレビュー・感想・評価

コルチャック先生(1990年製作の映画)
4.0
《コルチャク ゲットー日記》を過去に読了していたので、多少の素地はありました

偉大な教育者、医師でもあり且つ孤児院の院長…子供には大人が軽視している人間的価値があるとし、彼らの権利を主張したユダヤ人、コルチャック


1940年頃…ナチスのポーランド侵攻により、ユダヤ人は社会から切り離されゲットーへ送られます…ホロコースト作品ですს

彼の孤児院には飢えた子供たちが200人…過酷な日々の中コルチャック先生は食材を手に入れるため奔走…その為には手段も選べません

どんなに惨憺たる状況にありながらも…彼が子供たちと向き合うシーンは暖かい空気に包まれる素敵なひと時

そんな子供達は無邪気な笑顔を見せますが…その内側には押し潰されそうな疲労や怒りが潜んでいます

また、コルチャック先生を演じたヴォイチェフ・プショニアクがご本人とそっくり…丸メガネの中の優しい眼差しに吸い込まれそう…

素晴らしい子供達の表情を捉えるショットや実際の凄惨な映像もカットイン…ゲットーでの弾圧が見て取れる窓枠の格子状の閉塞感…撮影監督は名手ロビー・ミューラーです

折り重なる死体が積まれた荷台…その中に母親を見つけた子供は涙を見せるわけでもなくただただ寄り添います…そのシーンを遠くから眺めていたある子供は、突然窓に向けて石を投げ、抑えきれない怒りを爆発させます…とても苦しいシーンს

小さな子供達にはコルチャク先生は何も言わずただ抱きしめます…そして安心しきった子供達は静かな眠りに…せめて夢の中だけでも思いっきり遊んで欲しい

大人の勝手で何故子供達がこんなにも辛い思いを…観ているだけで胸が痛い

コルチャック先生は子供達に声を荒立てることは一切ありません…死んでしまいたいと訴える少年には子供にも死ぬ権利はあると、ひとりの人間として真摯に向き合います


放たれる言霊は虚飾無く子供達の心にストレートに響きます

« La mort est très facile, la vie elle est très très difficile. »

 死ぬのはとても簡単…
生きることを学ぶのは大変なことなんだよ…



外では銃声が鳴り響き、死体の写真を撮るドイツ兵の撮影隊の存在…言葉になりません

高名な医師であるコルチャック先生には恩赦が与えられ他国に亡命も出来たのですが…ただ子供達を見捨てることなど到底出来ません



  〜〜〜⚠︎以下ネタバレ含みます⚠︎〜〜〜














そして遂に…子供達にお粧しさせ「遠足に行くよ…」

ただその列車の行き先は…ს

何も知らない幼な子が笑顔なのが堪りませんს

反戦、畏敬、哀惜…監督のあらゆる想いが集約されたとても美しいスローモーション…爆泣です՞՞
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