あーや

コルチャック先生のあーやのネタバレレビュー・内容・結末

コルチャック先生(1990年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

ホロコーストをテーマにした映画は色々ありますね。正直このテーマで好きな映画はあまりない。(Life is beautifulは特に無理)
殆どは観たあと落ち込みます。でもこの作品は、落ち込ませることなくふわっと消えていった。
見たのはアンジェイ・ワイダの名作、「コルチャック先生」。
実在したユダヤ系ポーランド人の孤児院長のお話です。
まず冒頭からラジオパーソナリティーも務めていた彼のかっこいいセリフ。「世のため人のために身を捧げるというのは嘘だ。人がカードや女や競馬が好きだというのと同じように、私は子どもが好きだ。これは献身とは違う。子どものためではなく、自分のためなのだ。自分には子どもたちが必要だからだ。自己犠牲などというものを信じてはならない。それは虚偽であり、人を欺くものだ」
上記の子供ラブなセリフと賛否両論あるラストが秀逸。
その中身はというと、ワルシャワのゲットー内の道端でやせ細った身体の遺体を積み重ねて運んだり、ポーランド人のユダヤ人との接し方に変化があったり、親戚が集まりすぎて破綻しかけている裕福なユダヤ人やゲットー内でもドイツ側につき贅沢三昧のユダヤ人など・・・ゲットーの中はこんな感じなんやという光景を淡々と見せてくれます。
孤児院の資金集めや食料調達するコルチャックの姿を淡々と写しながらも、退屈せずに見れるのはかわいい子供たち、彼らの歌、淡い恋などの愛らしいスパイスのお陰でしょう。
印象的なシーンや台詞があっても、泣かせようとしてないところが良かった(←これ大事!)

そしてラスト。
白い羽が舞う中でコルチャックを先頭に200人の子供たちがトレブリンカの強制収容所行きの電車へ並んで歩いてゆくシーン。(若き天才、ジャン・ヴィゴの「新学期操行ゼロ」のオマージュはこの映画にも確かに在った!)
そこから画面は数秒間電車の音と黒い画面だけになるのですが、その後に映る最後が良かった!
この最後があるからこそ、名作なんだなと。それまで淡々と映し出されたリアルをここで一気に全て昇華しきるような幻想的な最後。全く予想もしていなかった最後でしたね。リアルで終わったらただの伝記映画ですものね。
このラストを作り出したアンジェイ・ワイダ監督。例えば「灰とダイヤモンド」も「地下水道」もテーマはポーランドの内戦でとても重い。
重いのになぜか彼の映画を見てしまうのは、人が殺し合うような現実を如何にして映像という芸術で作り出すのか?その魅せ方がうまい人だからだろうな。
あーや

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