まりぃくりすてぃ

コルチャック先生のまりぃくりすてぃのレビュー・感想・評価

コルチャック先生(1990年製作の映画)
2.3
大量のヒゲが何とも美しい。

でも、そのコルチャック先生を聖人善玉にしすぎて、役者もその方面にばかり燃えすぎて、画面からの放散エネルギーが一本調子。最初の最初に「私は愛の塊でも何でもない。子供が好きなだけだ」みたいな人間宣言してるわりには、人間臭さがまったく描かれてない。

例えば(具体的に書くと不必要に下品になるけど)、ゲップしたり、オナラしたり、鼻毛を抜いては何となく机の上に並べたり、コケそうになってひとり笑ったり、意味なく食べすぎちゃったり、無意識に鼻歌うたったり、お胸の大きい美人とすれちがってついニヤニヤしたり、些細なことで怒って仲間に怒鳴っちゃってから「ゴメンネ」と頭かいたり…………といった邪悪でも何でもないダークサイドが省かれすぎてる気がとてもする。

結果として、作品全体に起伏が足りないよ。序盤も中盤も終盤も同じ印象の、金太郎飴。いよいよの最終段階でさすがにちょっとは物語として駆け上がった? いや、音楽で煽っただけかも。
ラストはまあ麗し(く哀し)い。


台本通りなんであろう主演ヴォイチェフ・プショニャックの問題のマジメ一本槍演技は、唐突にいうが、ジョン・レノンの「HELP!」の歌唱と通じちゃう。これは褒め言葉では全然ない。
ファブ4時代のジョンの最リアルな代表曲が「HELP!」だというのは全世界の常識。でも、ジョン自身がそれの仕上がりに全然満足してなくて、理由はいろいろだろうが私的には、一本調子な歌い方にどうも難ありなのだ。ポップで力強いわりには途中で飽きる。悪い意味でだけポールのコーラスに助けられてる。楽曲としてのその名曲の意義(偉大さ・崇高さ・悲痛さ・切実さ・明快さなど)はもちろんいつ聴いてもビンビン伝わってくる。─────まるでやっぱりこのビンビンな“名作映画”と同じだ。