ジャイロ

コルチャック先生のジャイロのレビュー・感想・評価

コルチャック先生(1990年製作の映画)
4.3
愛だ。

子供たちへの愛が伝わってくる。

大いなる困難に立ち向かう姿が胸を打つ。アンジェイ・ワイダ監督が、ポーランドの実在した教育者コルチャック先生を描く。


ナチスドイツの侵攻が、どんどん苛烈になっていく。

「先生は生き延びなければならない」周りの大人たちの意見を一蹴し「子供たちと運命を共にする」そう言うと、コルチャック先生は笑った。

子供「先生、自殺しようと思ったことは?」

コルチャック先生「何度もあるさ」

コルチャック先生が、所々でロビン・ウィリアムズに見えて仕方がない。子供たちと真正面から向き合って、心で接するその姿がなんだか嬉しい。じんわりと熱いものが幾度となく胸に込み上げてきた。

ユダヤ人の孤児院。ここでは先生ですら裁かれる。

子どもにだって訴える権利があり、揉め事は自分たちの法廷で解決する。

法廷侮辱罪もある(笑)。

議会まである。

自分より幼い子に借金を返済する子。

想いを寄せる男の子にツラくあたられても、その男の子は(別の女の子に)恋してるからと訴えない女の子。

なんという子供たちだろうか。この子たちが大人になって築いた社会を見てみたかった。

誇りを捨て、子供たちのために生き延びる。困難に立ち向かうコルチャック先生。絶望の淵にいる皆を奮い起こし、たとえ明日が見えなくても、その歩みを止めようとしない。やがて絶望の臭いが充満するゲットーに、運命の日が訪れる。

信頼する先生に連れられて遠足に出かける子供たちの中には、年端のいかない子までいる。怖い思いをさせまいとする先生たち。胸を張り、ダビデの星を掲げ、手を繋いで歩くその姿は、今思い返しても胸がつまる。その行進は涙でよく見えなかった。

そして、ああ、なんというラストシーン

思いもよらなかった

こんなシーンがあるのだろうか

その美しさに涙が止まらなかった