イチロヲ

透視人間のイチロヲのレビュー・感想・評価

透視人間(1935年製作の映画)
4.0
妻との符丁を使って読心術ショーを展開している青年が、卿の令嬢を媒介することにより、未来予測の能力を手に入れてしまう。アーネスト・ロザーの原作を映像化している、サスペンス・ドラマ。

能力の会得と同時に高慢ちきな性格になっていく主人公を中心に、ワチャワチャとした人間模様が繰り広げられる。興行主、マスコミ、一般市民との掛け合いがユーモア満点に描かれており、主人公の憎めないキャラクター像に愛着が湧いてくる。

大衆にとって利益となるポジティブな予言をすると、「よくやってくれた!」と担ぎ上げられる。ところが、不利益となるネガティブな予言をすると、「不安を煽るな!」と手のひらを返される。

今日にも通じる人間社会の不条理性が込められており、能力者の悲哀へと落とし込んでいく王道パターンもまた、鮮やかに決まっている。原題の「The Evil Mind」に着目しつつ、本物の悪魔はどこにいるのかと、あらためて考え直すことが大切。
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