クシーくん

地獄への道のクシーくんのレビュー・感想・評価

地獄への道(1939年製作の映画)
3.2
伝説のアウトロー、ジェシー・ジェームズのキャリアを描いた伝記的作品。
極悪のパシフィック鉄道会社の地上げ屋に老母を殺された復讐として、地上げ屋を撃ち殺したことからお尋ね者になるジェシー兄弟が大列車強盗団を結成し、富める者から奪い貧しい者に与える義賊として持て囃されるも、犯罪者として追われる身から荒んでいくジェシーが悲劇的な死を迎えるまでを型通りに描いている。
印象的な墓碑銘「ここにその名を印すに値しない裏切り者かつ臆病者によって殺害される」というのは実際にジェシー・ジェームズの墓に刻まれた墓碑銘のようだが、実際にはその前文には「我が愛されし息子の愛おしい思い出の中に」とあり、母親が記した文のようだ。つまり本作でジェシーがグレるようになった契機である母の死はなかった事になる。別に史実に忠実である必要は全くないが、ジェシーの生き様についてかなり脚色された作品であろう事はここからもなんとなく窺える。

ジェシーにタイロン・パワー、兄のフランクにヘンリー・フォンダを配しているせいか、アウトロー染みた薄汚さがなく、二人とも妙に小綺麗で爽やかなのであまり悪漢という感じがしない。モノクロオリジナル版に後からカラーをつけているため、質感が作り物じみていることもその一因かもしれない。事実映画自体もジェシーの義賊としての面を強調していて、ならず者を主役にした映画とは思えないほど健全。ヘイズコード強めな時代の映画という印象。
タイロン・パワーとフォンダの演技は悪くないけど、如何せん古い映画でそんなに特筆すべき点はない。凡作。乗馬アクションも悪くはないが、同年の駅馬車と比較するとどうしても見劣りしてしまうのも辛い所。
ヘンリー・ハルはどの映画に出てきても癖つよおじさんで毎回演技が同じだが、愛嬌があって好き。「射殺すべし」の天丼ギャグ強し。

しかしなんでこんな変な邦題をつけたんだろう。「地獄への道は善意で…」に掛けた訳でもなさそうだし。
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