もげ

レッド・ドラゴン レクター博士の沈黙/刑事グラハム 凍りついた欲望のもげのネタバレレビュー・内容・結末

1.0

このレビューはネタバレを含みます

 原作小説読了後、再視聴。
 1986年米・原題はマンハンター。監督はマイケル・マン。
 当時はレクター博士が全く有名ではなく、トマス・ハリスの原作小説のタイトル「レッドドラゴン」にするよりは、マンハンターにしたほうが、殺人事件やサスペンスを連想させて集客が見込めると思われたんだろうな。あと前年にドラゴンのタイトルの映画が大コケしたかららしい。
 ちなみに当時の邦題は「刑事グラハム 凍りついた欲望」なんだか売れなさそうなタイトル。興行成績はおよそ860万ドルだそうで、制作費1500万ドルを回収しきれていないので、まぁ大失敗といってもいいのでは。

 内容は、元FBI捜査官のウィル・グレアムが「歯の妖精」とあだ名される一家連続殺人犯を追うのにレクター博士を利用しようとして、見事にしっぺ返しを食らうというもの。
 レクター博士は作中で、すでに多くの犯罪者のカリスマとなっており、また現実世界でも知的な連続殺人犯のキャラクターとして多くのファンがいる。博士の助力を得るのには、自身のプライバシーをいくつか差し出さねばならないが、ウィル・グレアムはプライドが高すぎて博士と取引ができず(そもそも犯罪者と取引をしようという考えもなかっただろう)、博士の価値観を軽蔑していることを隠そうともしない、そして博士は敬意を示さない者は「豚である」つまり殺してもいいものとしてカウントするので、グレアム捜査官の情報を歯の妖精に渡してしまう。
 レクターファンとしては「バカなやつだなぁ」と呆れながら見守るしかないのだが、博士の手の上で踊る両者を見守るのも、また一興。
 歯の妖精、もとい赤き竜の人の過去も可哀相ではあるし同情はできるものの、殺人衝動への共感はもちろん出来ない。

 とにかく音楽が合ってない。そして原作通りでもない。多少、省略されるのは時間制約的にしょうがないかとも思うが、この映画はけっこう改悪してある。原作ではブサイクな記者がイケメンだったりしてるが、最後のほう、原作では「捜査の手が迫ってきて驚いた犯人が自身の死をでっちあげ、証人には恋人をたてて逃亡、死んだと思われている隙に、もう大丈夫と安心して元の家に戻ったグレアム捜査官の家族に手をのばす」だったが、そのへんも省略して、犯人が恋人を殺そうとしているところにグレアム捜査官が無理やり突入して(しかも狙撃じゃなく、ガラスに体当たり)数人の警官が犠牲になるも、とりあえず犯人は射殺して恋人を救うという適当な終わり方。こりゃ酷い。そりゃ赤字になるわ。
 なにより、レクター博士役が、そのへんのオッサンにしか見えない。役者不足だな。原作が大変面白いだけに、このクソ映画っぷりは酷い。レクター博士ファンもがっかりな出来。ヒットした原作だからって適当に作ると失敗するという見本。
 犯人役とその恋人役はなかなか良いキャストだったが、いかんせん脚本がクソで生かし切れていない。クソっぷりを確認したい人には一見の価値ありかも。
もげ

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