Ricola

ペイ・フォワード 可能の王国のRicolaのネタバレレビュー・内容・結末

3.4

このレビューはネタバレを含みます

「不可能を可能に」
その実現の難しさは言うまでもないが、こんなことがあってくれたらいいのに、と願いたくなる作品である。
とはいえ、結末において決して後味がいいとは言えるものではなかった。しかしそれは世界に投げかける問題提起として置かれた結末と考えられる。


たいていの子供の考えの根底には、性善説があるのではないだろうか。
犯罪をおかしたとしても、どんなに落ちこぼれたとしても、人間は人を思いやり合えるのではないか。

この世は最悪だからこそ、世界を変えたい。決して恵まれているとは言えない環境で育った聡明な少年の小さなアクションが、水面に投げられた小石のように、波紋を広げていく。
人の善意を単純に信用することは難しい。その行動の意図には裏があるのではないかと疑ってしまうのも、無理はないだろう。
信頼関係を築き上げてない赤の他人ならば尚更である。

「世界が変わるのを見たかったんだ」
そう言った少年は、アル中の母親のもとで育ち、迷惑を被るものの、やはり彼女のことを愛している。
彼は母親のために、そして善のアクションをおしえてくれた先生のために、動き出すのだ。

数珠つなぎでどんな人からどのようにペイフォワードされていったのかを、ペイフォワードされた記者がたどるという、2軸のストーリー構成をとっている。

なぜ今ここで会っただけの見知らぬこの人は、自分にそこまでの親切をしてくれるのだろう。そう思う人たちの疑問と感動が、時間軸を遡って見ていくことで、その根源へとたどり着く。
何をしたって無駄だと諦めるのではなく、まずはやってみること。
少年の勇気が「世界を変えた」のは、たしかだった。
Ricola

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