さく

海と毒薬のさくのレビュー・感想・評価

海と毒薬(1986年製作の映画)
3.5
原作は超有名ですが未読(こればっか)。上映後には奥田瑛二さんによるトークショー付き。奥田さんデカイ、手長い、指長い、足長い、靴下赤。

ここから先は例によってWikipediaの受け売り的な内容がほとんどなので、良い子のみんなはWikipediaを読もう! 最後にちょっとだけ奥田瑛二さんのトークの内容もあります。

実際にあった事件を元に原作が書かれたようですが、ストーリー自体は創作とのことです。善悪判断の絶対的基準に宗教というバックボーンを持たずに「場の空気」による「同調圧力」で判断する日本人(悪気は全くない)の中で一人悩む勝呂(奥田瑛二)の苦悩を描いた作品。

原作者の遠藤周作さんはクリスチャンであり、その視点から見た日本人を描いたという構図。どうもこれが「批判的」と受け取られたらしく大変ショックを受け、続編も考えたけど断念することになってしまったらしい。映画を見る限りでは批判的ではないよなぁ。

以下、奥田瑛二さんのトークショーより。一部聞き間違い、記憶違いがあるかもしれません。

本作に出演した奥田さんは当時36歳。映画デビューは既に果たしていて、所謂「トレンディドラマ」に出演を続けて人気絶頂の頃。でも本人は「人気者」であることが嫌でそこから逃げたいと言う思いもあり、映画の世界に戻りたいと言う思いが強かったそうです。

そこで当時の事務所の社長から「熊井監督に会いに行く」と言われ監督のマンションを訪問。奥田さん自身は既にキャスティングが決まったものだと早合点していたが、この時の5分ほどの対談が実はオーディションを兼ねた面接であり(奥田さんは後に知る)、熊井監督は廊下を歩いて帰る奥田さんの「後ろ姿」を見て、「彼に決めた」。インタビュアーの方も「熊井監督にお話を聞いた時も後ろ姿が良かったと言ってました!」→奥田さん「前はどうなの⁉️」場内笑。

奥田さん曰く「勝呂が憑依していたのかもしれない」とのことで、撮影に向かうタクシーの中ではいつも胃がキリキリと痛んでしょうがなかったとのこと。現場について衣装に着替えると不思議と痛みも落ち着いたと。

他、クランクイン前の演技テストのような場面(取り調べのシーン)で初対面の岡田真澄さんからかなりの勢いでビンタを喰らわされて痛かったけど、後からやさしく「ごめんね」と謝られたというエピソードも。

そんな中、一番興味深かったのは作中で使われる「血」に関するエピソード。本作の血は本物が使われていることで有名(?)ですが、助監督が血を抜かれていたとのこと。奥田さんは「私は低血圧で貧血になるから抜かれずに済んだ笑」。熊井監督曰く「血糊は粉みたい(?)に散らばるからダメだ。黒澤さんは白黒だと墨汁を使っていたが、墨汁だと色が濃すぎるんだよ。本物の血を使おう! 本物なら誰も文句言わない!」どれくらい抜かれたのか知らないけれど、血を抜かれる方はたまったもんじゃないよ!

そんなこんなで、奥田瑛二さん的には今でも「生涯一」という本作は必見。ただし、公開当時も、体調の悪い方、妊婦中の方、重篤な基礎疾患を抱えている方の鑑賞時には注意と言われていたように、重い、グロいのでその点はご注意を!
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