ひろ

座頭市のひろのレビュー・感想・評価

座頭市(2003年製作の映画)
3.5
北野武監督・脚本によって製作された2003年の日本映画

第60回ヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞、日本アカデミー賞最優秀音楽賞など、数々の賞を受賞した

北野作品初の時代劇であり、エンターテイメント性の高い作品。これまでの北野作品とはあらゆる点で違っている。いつもは極力台詞を削るが、この作品は台詞による説明などがちゃんとある。徹底的に乾いた暴力を描いてきた監督だが、この作品の殺陣は、魅せる殺陣だ。

勧善懲悪ものであるのも珍しい。いつもは主人公すら善なのか悪なのかあいまいだが、今回は敵がちゃんと存在している。主人公が死ぬことが多い北野作品の中で、ここまですっきりした終わり方の作品は新鮮だった。北野作品最大のヒット作になったが、今までで一番解りやすい内容だったのが大きいと思う。

設定だけは座頭市シリーズを題材にしているけど、内容は完全オリジナル。従来の時代劇にはない映像に仕上がっている。新しい時代劇像ということで、旧来の時代劇俳優から批判もあり賛否が分かれたが、こういう作品が新しい時代を築いていくのも確かだ。

金髪の座頭市を演じたビートたけしといい、浪人の服部を演じた浅野忠信もかっこよく描かれていた。悪役の銀蔵を演じた岸部一徳もよかった。悪玉のNo.2みたいな役が似合いすぎ。この作品の魅せる殺陣は本当にかっこよかった。黒澤明監督に影響受けてるだけある。

この作品で話題になったのは音楽だ。農民の動きに合わせたリズミカルなサウンドは、まるでミュージカル映画のようだった。ラストの祭りでのタップダンスは圧巻。監督のタップダンスへの思い入れは有名なだけに、あのシーンにも思い入れを感じた。そんな音楽を担当したのはいつもの久石譲ではなく、はちみつぱい、ムーンライダーズでメインだった鈴木慶一。作品にフィットした完璧な音楽だったと思う。

「Dolls」に続いて衣装監修を担当した山本耀司による華やかな衣装も注目だし、注目点が多い作品だ。北野作品が難解だと避けていた人でも楽しめる、エンターテイメントに特化した北野作品をご覧あれ。
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