のんchan

1900年ののんchanのレビュー・感想・評価

1900年(1976年製作の映画)
4.5
ベルナルド・ベルトルッチ監督の5時間16分に渡る超大作。
今作を制覇するのがずっと課題だったが、一日掛けてゆっくり堪能しました。

ベルトルッチ作品には不可欠の2人の巨匠が作品の質を更に高めています。
撮影監督ヴィットリオ・ストラーロのなんたる映像美。
そして、音楽はエンニオ・モリコーネで叙情を誘う。

邦題が誤解を招くが、原題は『Novecento』=(1900年代)であり、ほぼ100年に渡る壮大なる大河ドラマ。


1901年、イタリア北部の農村で同日に生まれた2人の男がいた。
地主の息子アルフレードと小作農頭の息子オルモ。階級の違う2人の人生の変遷を、第一次世界大戦、ファシズムの台頭を経て第二次世界大戦終了までのイタリア現代史に絡めて描いている。


前半は少年時代の子役が良かった。
身分の違う2人の関係性は当然子供時代から明確に違い、お坊ちゃまのアルフレードは、生きるのに精一杯の野蛮で逞しいオルモの行動から学びとっていく。それは身体(性器)の成長一つにしても無知なアルフレードはオルモから教えてもらう。いつしか友情のようなライバルのような2人だけに通じる感情が芽生えていく。
線路に寝転び肝試しも、途中で逃げ出すアルフレード。汽車が自分の真上をスレスレで通過するオルモはそれを楽しんでいる風。
線路のシーンはラストで胸が痛むことになるのだが...
成人し一緒に街に出掛けて女遊びをすることも。
オルモは愛する妻が出産と同時に亡くなってしまい、アルフレードは妻の奔放さに悩まされていく...

階級社会の不満からファシズムが台頭し、労働者も立ち上がる時が来る。
動乱の時代に取り残されていく地主の苦労、立場逆転へ変遷していく農地解放革命へ。
 

ベルトルッチの芸術性は良くも悪くも?生々しいのが魅力です。
子供も大人も性器を映しSEXシーンもお手のもののエロ描写。
豚を始末し生食する加工、馬の尻から出る糞などのグロ描写。
動物だけでなく人殺しのシーンもあり血みどろ...
様々な赤の使い方がお見事でした。


アルフレード役ロバート・デ・ニーロは当時32歳。育ちの良い品のある装いと顔立ちから、どんどん落ちぶれていく様が切ない。

オルモ役ジェラール・ドパルデューは当時27歳。若々しく逞しくイケメンです。細いし鼻も割れてなく最初は気付きませんでした。

アルフレードの妻役にドミニク・サンダは当時25歳。精神不安定でアルフレードを翻弄させていく。ドレスも素敵だし本当に美しい。

この作品に重要な役所、ファシストの幹部役のドナルド・サザーランドは農民を苛め抜き容赦なく虐殺する。鬼畜と化している演技は圧巻。

他にバート・ランカスター、ロモロ・ヴァリ、アリダ・ヴァリ、ステファニア・サンドレッリなどの豪華キャストが揃い踏み。


今では考えられない5時間強の作品。当時だから出来たことだし、今思えばもう少し簡潔にしたらもっと多くの人の目に触れられただろうから、そこはもったいないけど、とにかく映画作りのエネルギーに圧倒される。
観た後も余韻が凄い。映画に感謝し感動に浸り、幸せな一日を過ごせて大満足でした。
のんchan

のんchan