井出

レネットとミラベル/四つの冒険の井出のネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

最高に良かった。
フランスの田舎、自然、鳥や虫の声。ただ落ち着き、人も自然体でいい。動植物と触れ合い、雨を楽しむ。カメラも自然体で、ただただ彼女たちと自然の瑞々しさと、豊かさを感じる。音もいい。素朴で、セリフも少なく、ストーリー性もない。カットも音響もアングルも素朴。だからこそただただ安心してみていられる、安定の世界。
面白かったのは、ダンスのところで、ミニマルなエレクトリックな音楽の中で、足元だけを映すシーン。どこかブニュエルとかに通じる感じ。いやらしさはあまり感じないが。

ところ変わって、パリ市内。そこではやはり、他者に対する疑念や、多様な人間の思いの交錯や価値観の対立、貨幣による貧しさがある。ただやはり不安定さは魅力でもあって、ファッションや様々な人やものと出会い、葛藤があるがゆえの成長や諦めがある。それぞれに語り、セリフがあり、物語がある。人のエネルギーが溢れる都市はどこかスリリングで、だからこそ、面白い。

芸術は語るべきではないというのは同感だが、これも人の芸術だと思って、受け入れて欲しい。ちなみにこのシレンシオー沈黙せよは、ゴダールの軽蔑とデビッドリンチのイレイザーヘッドと通じるものがある。芸術批評は常にこの批判にさらされる。
井出

井出