ダイナ

タクシードライバーのダイナのネタバレレビュー・内容・結末

タクシードライバー(1976年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

音楽のロマンティックな美しさに反して、売春婦や暴徒で溢れる退廃した街で孤独な男が愛を求めて・社会への憤りを破裂させるという狂気が描かれる内容。バイオレンスな内容にミスマッチのような音楽を違和感なく合わせる手法はスコセッシの得意な技。

タクシー運転手という職業柄、そして客や場所を選ばないというスタンスにより様々な人間と遭遇する事で鬱屈した価値観が形成されていってしまったトラヴィス。尖りすぎてしまった正義感はどう見ても正当性のある社会へのカウンターには思えなかったものの、最終的には幾分マシな方へ軌道修正されました。ラストに関してちょっとだけ思う所が。個人が弱い立場である大衆から支持されるのは分かります。トラヴィスが強盗に発砲するシーンを振り返ってみます。躊躇いもなく、撃った後の気後れもない。虫の息の強盗を店主が思い切り打ちつけ「今月で5回目」…。トラヴィスの凶暴性、強盗が日常的になってしまった街、被害者側の加害者への恨みの強さ、と登場人物3人だけでたくさんの情報が詰まった面白いシーンです。蹂躙してくる悪というものに殺意に近い反抗心を市民全員共有しているのはこのシーンで分かります。そしてアイリスの家族がトラヴィスに感謝するのも大いに分かります。「けれども」マスコミがヒーロー扱いで取り上げるのはなんとなく偏りすぎ感が個人的ジレンマ。「孤独な男が射殺しまくった」という事実はフワッとしたまま復帰してたのは困惑。正当防衛でもないですし。時代か。アメリカの法律はそんな感じなのか。

デートのぎこちなさからやらかし、筋トレ、銃の品定めや装備DIY、銃弾に切れ込み入れてとかモヒカン、あぁ〜ワクワクさせてくるツボ突いてくるぅ!SSとのイチャイチャとか、ニヤニヤするデ・ニーロにつられてニヤニヤしちゃいますし、SSに気づかれた瞬間全力逃走する姿は笑っちゃったり(お前の暗殺の覚悟はそんなもんかい!)と、シリアスに見せかけて面白いと思わせる場面がたくさんある所が本作の魅力!繰り返しになりますが、音楽が素晴らしすぎてラストシーンの美しさに拍車をかけてましたね。

夜のしじまの中タクシーを走らせる日常は変わらないわけですが、世間からの見る目、またトラヴィスの中で渦巻いてた闇のような攻撃性は影を潜め彼自身清々しい顔付きになりました。きっかけを探している悶々とした頃を思い返すとカタルシスを感じます。何か行動を起こしたい時、本作を観ることでモチベーションを上げてくれそうな気がしてまた定期的に見返したくなる一作。初手デートでポルノ映画とかバイオレンスな部分は影響されちゃいかんですがね。
ダイナ

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