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タクシードライバーのkentarismのレビュー・感想・評価

タクシードライバー(1976年製作の映画)
3.9
スコセッシはトラヴィスの死や夢オチを否定する回答をしているらしいが、終盤の天井ぶち抜きドリーや、マンション前のクレーン撮影はトラヴィスの魂が去っていくような演出にも思えた。英雄視されている状況やミラー越しに対話するベッツィ、ショットごとにトラヴィスの髪型が違うことで時間の入り乱れを感じた編集も夢オチがあり得ると思った要因。

夢オチと解釈できないなら、余計に残酷な映画だと思った。パラノイアが招いた暴力もメディア次第で善に。あっさり影響を受けているラストのベッツィの表情がキツい。スコセッシ自身が演じる不倫された夫、スポーツに懐柔させられるアイリス。女性不信を加速させる演出だった。

女性や黒人という社会的に弱い立場へのヘイトによって自分自身キープしようとする弱者男性の思考が溢れ出てる。都市生活で自意識をこじらせる非モテの滑稽さが他人事ではなく、今でも通用する映画で感心した。

電話するトラヴィスがフレームから外れ、廊下を写し続けるショットが一番心に残ってる。あの哀れさったらない。

グッドフェローズに続いて好きなスコセッシ作品。
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