みきちゃ

タクシードライバーのみきちゃのレビュー・感想・評価

タクシードライバー(1976年製作の映画)
5.0
ポール・シュレイダー監督・脚本の『魂のゆくえ』が良かったのと、『俺たちは天使じゃない』で観たデ・ニーロ が楽しかったのとで、お二人を同時体験するべく本作を初鑑賞。

1976年アメリカ公開。ニクソン政権のスキャンダルで大揺れのアメリカに、ベトナム戦争で心身共に病んで疲れ切った国民があふれるアメリカに投下された、傷を傷で癒すかのような映画。当時のすさんだ空気感を見事に封じ込めているとして高く評価されたことを思うとこちらの心がすさみそうになる。

ベトナム戦争の帰還兵トラヴィスが、大都会ニューヨークで一人暮らす部屋。タクシードライバーとして、毎夜NYとそこに生きるろくでもない人々を垣間見続ける。仕事をして、ポルノ映画を鑑賞し、日記を書く。この連続する、空虚さだけの日々。治らない不眠症。つきまとう疎外感。逃げ場のなさ。何をやっても上手くいかない。矛先の向けどころが見つからない怒りや、つのる苛立ちが、トラヴィスを蝕んでいく。

トラヴィスよー…。彼のふるまいから、眼差しから、決して悪人ではないことが伝わってくる。彼はまともな道徳観と倫理観を持った、ごく普通の男だ。時代背景は人を形成する大きな要因の一つで、人は生まれる国も時代も選べない。

トラヴィスの行動原理を余計な説明無しに理解出来てしまうこと。誰だってトラヴィスになり得る可能性を否定出来ないこと。成功体験が必ずしも手放しで喜べるものとは言い切れないこと。正義感=善とは限らないこと。はー。

上質な音楽はいわずもがな、おしゃれ映画を目指しているとは思えないけれどどうしたって全体的に超おしゃれ。スコセッシ映画で見るニューヨークは特別。やっぱりスコセッシ映画はすごい。普遍的なテーマを扱ってるからなのか、好きとか嫌いとかは関係なく、映画としてとても力強い。スコセッシ監督ご本人出演シーンは、デ・ニーロの演技に押されまくってたように見えてにやにやしてしまった。きっと面白い方なんだろうなー。

銃の購入を検討するシーンが興味深くて、私が買おうとしてるかのような目で見ちゃってた気がする。44マグナムがとにかくやばい。

思い返しても印象的なシーンだらけ。洗練された大人の女性の美しさがあるベッツィがいて、おぼこくてませてる愛らしいアイリスがいて、女性キャストは完璧だった。

アイリスを演じた、当時13歳のジョディ・フォスター。このインタビューによると(https://youtu.be/MW_bz5EqlQY)ハリウッドでは未成年?のうちはやばい役を演じても大丈夫な子役かどうか、キャスティングの時点で精神鑑定を行って確認してるってことでいいんだろうか。それならとても安心する。

最近、名作っぽい映画を鑑賞すると、たまたま、たびたび、第49回アカデミー賞にぶち当たる。映画的にほんとに熱い年だったんだなあ。この年、『タクシードライバー』は作品賞、主演男優賞、助演女優賞(当時13歳のジョディ・フォスター!)、作曲賞の4部門にもノミネートされるも、強敵『ロッキー』と『大統領の陰謀』と『ネットワーク』などを前にどの部門でも最優秀賞には至らず。

英語版Wikiによるとデ・ニーロが俳優として参加した映画は公開前も含めると105本。デ・ニーロ好きとか言っている私が何本鑑賞してるかを数えてみたら、たったの11本…。デ・ニーロ働きすぎや。

11本ぽっち見た時点でのデ・ニーロ作品マイベストは『アナライズ・ミー』。

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有名なアドリブ台詞、“You talkin’ to me?”ってこれかー。ついに本物を見たよー。感動。
みきちゃ

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