ぐち

群盗荒野を裂くのぐちのネタバレレビュー・内容・結末

群盗荒野を裂く(1966年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

最初から最後までワクワクして面白かったし男二人に情緒は乱されたしキャラクターが皆秀逸で愛しかったしラストの不思議な爽快感よ!

チュンチョの純真と単純とバカとカリスマと陽気と愛の絶妙なバランスすごいな…どれかに偏ってたらわかるんだけど、このバランスはちょっと見たことないキャラだ…すごく良い…

アデリータもかっこよかったなー!
この先生きていくことを現実的に考える彼女が男たちを置き去りにして去っていく後ろ姿は、それを見送る男たち含めた構図が従来の西部劇の逆転みたいになってて良かった。

小僧ももっと単純なツンキャラかと思ってたらずっと何考えてるのか分からんくてちょっと怖かった。でも蓋を開けたら目的はド単純だったのが好感。
後半で将軍を殺すのが目的なのは察するんだけど、復讐かなって思ってたんだよな。
本当に単純に金のためで、本人もずっと言ってたように金にしか興味ない。イデオロギーも私怨も無いのがこの物語のキャラとして良かったなーて。
チュンチョが仲間や祖国や無辜の民に愛はあるけど、確固とした信念というほどのものはなくて欲に正直なのも。

ラスト、友情を殺すシチュエーションやテンションとしてめちゃくちゃ好みだ。
もっと湿っぽかったり大々的に決闘にしても良かったんだろうけど、この、情念はこもってるのに妙に明るくて呆気ない決着の付け方が好き。
いろんな感情が渦巻いてて情緒は乱されるのにメキシコの空気みたいにカラッと熱くて乾いてる。何故か爽快感すら感じる。チュンチョのキャラと音楽のせいかな〜

飢えて死にそうでもパンじゃなくてダイナマイトを買え。

メキシコ革命のこともっと知識があれば色々見えるものもあったかな?
それでも単純に楽しんでたら教養とか貧富の差とか根本の価値観の差とかえげつないものが無造作にぽーんと放り投げられてドキッとさせられる。

アメリカとメキシコの関係の擬人化みたいになってた小僧とチュンチョの友情があんな形になったのが、言葉で完璧に説明できない複雑さで完璧に物語化されてるのがすごいなー。魂レベルで惹かれあったんだろうに魂レベルで分かり合えない…ラストがああなるのが凄く自然で納得いく。

原題の「エル・チョンチョ 何故殺すのか?」が秀逸。邦題のセンスも好きだけど。
村の権力者もニーニョも言う「何故殺すのか?」
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