茜

讃歌の茜のレビュー・感想・評価

讃歌(1972年製作の映画)
3.7
谷崎潤一郎の「春琴抄」という小説が原作。
盲目でありながら天才的なお琴と三味線の才能を持ち、プライドの高い師匠・春琴。
彼女の付き人である佐助は、彼女から暴力的な振る舞いを受け下の世話をさせられても、それが喜びとばかりに献身的に世話をする。
そんな二人の倒錯的な物語が、春琴の屋敷で女中をしていた老婆の語りと共に描かれる。

谷崎潤一郎の映画化は少なくないものの、やたら安っぽいポルノのような作品が多い印象…そんな中でもこれはかなり出来が良いと思う。
春琴の不自然に白く塗った肌は初っ端から異質で独特の雰囲気を醸し出しているし、派手な映像や音楽がある訳でもないのに不思議とお話に惹きつけられてあっという間に最後まで鑑賞してしまった。

サドマゾヒスティックな二人の関係が、終盤のとある出来事をきっかけに少しずつ変化していく訳だけど、ここからの展開がなかなか深い。
兎にも角にも献身的な愛というのは時に信仰心のようだなと思ったりなんだり…。
とてもアブノーマルで哲学的、理解出来たかと言われたら自分は出来ないんだけども、互いを愛するという形を見つけたように思えるラストは何だか感慨深い。
茜