ゆみモン

讃歌のゆみモンのネタバレレビュー・内容・結末

讃歌(1972年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

何度も映画化されている谷崎潤一郎の『春琴抄』。
全てを観てはいないが、私が知っている中では、最も耽美な雰囲気のする作品だ。
ATGらしいと言えばそうだし、新藤兼人らしいと言えばそうでもある。
春琴と佐助に仕えていた当時の女中を老人ホームに訪ねていき、昔の話を聞き出しながら回想シーンで描いていく…という手法は面白いが、その必要はあったのか?と疑問だ。

春琴役の渡辺とく子は、顔はそれほど美形だとは思わない。が、いつまでも少女のような、肉感的な女を感じさせない、浮世離れした美しい身体をしている。それが、物語の不思議な世界観に合っている。
佐助役の河原崎次郎も、ひたすら尽くす健気な丁稚になりきっている。

春琴と佐助の、自分たちさえ良ければいい…という究極の愛の形。愛し合って生まれた子どもさえ、次々里子に出してしまうという、その身勝手さ。
自分にはできないと思うからこそ、覗いてみたくなる愛の世界なのかもしれない。