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社葬のtakのレビュー・感想・評価

社葬(1989年製作の映画)
3.4
「日本の新聞はインテリが作ってヤクザが売る。」との字幕、地方で繰り広げられる激しい販売合戦の冒頭が強烈なインパクト。ところが映画はそんな販売戦争がテーマではない。社長派と会長派に分かれた社内の激しい対立。会長の失脚を謀ったら、今度は社長が芸者とイチャイチャしてる間に腹上死。社葬を執り行う裏で渦巻く欲望とエゴのぶつかり合い。日曜劇場のアツい企業ものドラマとは全然違う、東映得意の抗争劇だ。こんな争いがなくてよかったぜ、うちの職場ww。

エリートだらけの新聞社の重役に高卒で上り詰めた主人公を緒形拳が演ずる。この時期には名だたる女優さんとイチャイチャする役が多かったけれど、「社葬」の主人公は等身大で、ちょっとワイルド、少年のようにまっすぐな男を演じている。料亭の女将と浮気するけれど、妻の前ではオドオドして取り繕う様子がおかしい。誰の側にもつかないと言い続けた彼が、最後の最後に動く。これが誰かのために尽力して喜ばれるという動機ではなく、自分の立場が危うくなることが発火点になってるのもまさに等身大。今どきの企業ドラマで感じる高揚感はまるでない。それでもなんか憎めないのは、緒形拳の好演があるからだろう。

主人公を誘う女将に十朱幸代、秘書の藤真利子、大学受験の息子が心配な妻に吉田日出子。吉田日出子はギスギスしたドラマをホッとさせてくれる存在。また井森美幸がなかなか印象的な役どころ。会社の役員たちが曲者役者ぞろいで、怪しげな人ばかり。お座敷でリパブリック賛歌を歌う江守徹が笑える。若き佐藤浩市と、竜童組として活動してた頃の宇崎竜童の音楽がやたらカッコいい。

2022年11月に配信で再鑑賞。鑑賞記録は初回を記す。今観るとなかなか難ありだけど、不思議と嫌いになれない。
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