ムギ山

逃走迷路のムギ山のレビュー・感想・評価

逃走迷路(1942年製作の映画)
2.5
見た。正直あんまりよろしくない出来。じっさい『ヒッチコック/トリュフォー』でも

T:そうですね。プリシラ・レインというのは、ヒッチコック的なソフィスティケートされた女優からは程遠いタイプですね。平凡な、というよりもむしろ、かなり品のない女優だし……。
H:そうなんだよ。これにはがっくりきた。
だの、
H:……そこからいくと、『逃走迷路』の場合は、ちょっとアイディアを詰めこみすぎてしまって、きちんと整理しきれなかったきらいがある。

と、わりとぼろくそである。たしかに、ソルト・シティのアジトから見えるダムの話はほったらかしだし、戦艦の進水式で爆弾を爆発させる計画が主人公の活躍で失敗したかにみえながらその後ひっくり返った船のカットがあって???ってなったり、なんだか劇中で解決されないエピソードが多すぎる感じ。またヒロインのプリシラ・レインさん(私はこの人それほど悪くなかったと思う)が途中で心変わりするのも説明不足でようわからん(心変わりしたようで実はその後保安官にチクリに行ってたりするし)。

また、『海外特派員』もそんな印象があるのだけど、戦争中の愛国的な空気をまとったヒッチコック作品ってなんだか読後感がいまいちよくないんだよなあ。しょうがないのかな。

主人公ふたりが途中で出会うサーカスの〈奇形人間〉(『ヒッチコック/トリュフォー』内の表現)の場面が、現代では撮影不可能な感じで興味深い。トリュフォーさんは「このシーンでは観客は笑いっぱなしです」とおっしゃっているけど、そういう感性はもう失われたものであることだなあと思った。ほかに、プリシラ・レインの叔父の盲目の紳士、主人公を二度にわたって助けるトラックの運ちゃんのおっさん、それから悪者のトビンの3,4歳くらいの孫娘のスージーがよい。特にスージーはホンモノの赤ちゃん(へんな言い方だ)なのに、きちんとストーリーに絡む芝居をしていてすごいと思った。不自然にカットをつないだりもしてないし、どういうふうに撮影したんだろう?
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