ジュライ

ブリッジのジュライのレビュー・感想・評価

ブリッジ(2006年製作の映画)
3.9
ドキュメンタリーであり、現実にゴールデンゲートブリッジから投身自殺する人々のその瞬間の姿と、関係者へのインタビューで構成された93分間。

印象深かったのは、家族や友人など、遺された人々の多くが「なぜ死ぬのか分からない」と口にするとところ。
少なくともここに登場している自殺者はみんな前もって希死念慮をほのめかしていた人ばかりで、彼らが病気や生活苦や生きづらさに悩んでいたことを遺族たち自身がそれぞれ証言しているのに、それでも口々に「なんで?」と言うところが、私としては逆に「『なんで』ってなんで?」と疑問に思うし、ああそんなもんか、という感じ。

インタビューを受けていた人たちの中で私が共感できた人は2人で、
「(死んだことで苦しみから)解放されたのだと思ってホッとした」
と言っていた友人と、
息子を亡くした父親の
「心の苦痛が耐え難いほど大きくなったら何でもするさ。“癌”だよ。心が癌にかかったとしたらどんな痛みを体験するか」
という言葉。


特典映像内の監督来日インタビューは、どこまで本心でどこまで建前なのかは本人にしか分かりませんが、私はわりと真摯に語っているように感じました。

「だがこれが我々の世界の現実であり、映画そしてカメラにはそれを見せる力がある。現実や真実を見ることを拒否するのは、助けやケアを必要としてる人々に対しひどい仕打ちをすることになるんだ」
「亡くなった人は価値ある命を生きた人であり、この世界に彼らを引き留める力がなかっただけなんだ」
「本作は“死”ではなく“命の終わり”を見せている」


死を遂げた彼らの心が今は何ものにも苛まれることなく、安らかであることを願います。
ジュライ

ジュライ