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荒野のガンマン/致命的な仲間のHKのレビュー・感想・評価

3.6
TV出身のサム・ペキンパー監督(当時36歳)の劇場デビュー作、再見です。
監督だけを任されたらしくペキンパーらしさはほぼありません。
ガン・アクションも少なく、言われなければペキンパー作品とわからないくらい。それでも当時の西部劇としてはかなり異色です。

主人公はある男に復讐を誓いながらも古傷のため銃を持つことさえおぼつかない半端なキャラ。しかもそのせいで映画が始まって早々ある子どもを誤射してしまいます。
しかし事故だから罪に問われないという子供の母親にとっては納得いかない展開。

恨む立場が恨まれる立場に逆転するヒーローとは程遠い主人公はブライアン・キース(当時40歳)。本作の前にペキンパーのTV西部劇でも主演を務めていたそうです。
子供の母親を堂々と演じるのはモーリン・オハラ(当時41歳)。
オハラは既にペキンパーの敬愛するジョン・フォード作品で有名でしたからペキンパーは感激だったでしょう。
ただ、とってつけたようなオハラの水浴シーンは『ダンディー少佐』のセンタ・バーガーのときと同じく製作サイドからの要請だったんじゃないでしょうか。

主人公は成り行き上、自分が探しあてた復讐相手とその仲間、そしてこの親子(子どもは遺体ですが)と一緒にある場所まで同行することに。

この『荒野のガンマン』という邦題は見てわかる通りかなりテキトーです。
原題は“The Deadly Companions”
いつの間にか “致命的な仲間”という直訳の副題がついていますが意味不明。
“deadly”は、“致命的な”の他に、“命取りの” “死人のような” 最悪な” “許しがたい” “ひどい”、などの意味がり、“companions”の意味は(ある行動を共にし親密な関係にある)仲間、友とあります。
そう聞くとおぼろげながら、呉越同舟とも最悪の道連れとも言えるこの一行を指す原題の意味がわかってきます。

ペキンパーの後の作品にも出演したチル・ウィリス(『ビリー・ザ・キッド/21才の生涯』)や常連となるストローザー・マーティンの顔も見えます。
キースとオハラの関係は後の名作『砂漠の流れ者』の原点のようにも思えてきました。
ペキンパー色は薄いとはいえ印象に残る西部劇です。
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