茶一郎

荒野のガンマン/致命的な仲間の茶一郎のレビュー・感想・評価

3.5
 少年を自分の撃った流れ弾で殺してしまった元南軍兵士イエローレッグの懺悔と復讐の旅。
 主人公が戦争中、自分の頭の皮を剥がしかけた北軍兵士への復讐を誓い、旅をする毎日、ある酒場で縛り首になっている復讐の対象=タークを見つけます。主人公は素性を隠し、ターク、その相棒ビリーと銀行強盗を企むも、その銀行が他の悪党に襲われ、そのまま銃撃戦に。その銃撃戦で、踊り子の息子ミードを流れ弾で殺してしまいます。罪悪感を感じた主人公は、子を亡くした踊り子、ターク、ビリーとミード少年を埋葬するための旅に出ました。【あらすじ】

 意外に入れ込んだストーリーも、卒がない語り口で全く問題なし、しっかりとした落ち着いた作りの西部劇。今作『荒野のガンマン』、またの邦題『ワイルド・リベンジ/復讐の荒野』は、「西部劇を終わらせた男」=サム・ペキンパー監督の映画監督デビュー作です。
 後に「ペキンパーは西部劇という古いボトルに新しい酒を注いだが、その後そのボトルを粉々に吹き飛ばした」と言われることとなるペキンパーの「古いボトルに新しい酒を注ぐ」過程が今作ということでしょうか。どうにも今作にはスタジオ側の意向が強く出ているため、ファンの間では次作の『昼下がりの決斗』をペキンパーの処女作と位置付ける場合も多い様子。しかし、今作の中にも後のペキンパー作品共通のテーマが(偶然かもしれませんが)随所に見られます。
 それが色濃いのは、ヒロインが「踊り子」であるということ。後の『砂漠の流れ者』でも、ペキンパーは娼婦に優しい眼差しを向けましたが、今作のヒロイン=踊り子キットは非常に力強い存在として描かれています。職業的な偏見よりもむしろペキンパーは、キットに陰口を叩く周りの女性に厳しい目を向け、これは『戦争のはらわた』の女性軍人の怖い描き方と重なります。

 何より、どんな作品でも終わった時代に取り残された男を描き続けたペキンパー、『砂漠の流れ者』も過去の復讐だけを目的に生きる男が主人公ですが、今作『荒野のガンマン』もすでに終わった戦争の傷跡を引きづってでも生き続ける男を主人公に持ってきている。そんな主人公が終末の地から、逃避行のように -この逃避行がペキンパー作品において異性であるとは限らず、同じ意志を共有した男同士の場合が多いですが- 新たな地に去っていくのも実にペキンパーらしさを感じます。
茶一郎

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