Melko

点子ちゃんとアントンのMelkoのレビュー・感想・評価

点子ちゃんとアントン(2000年製作の映画)
3.9
「おいで、点子も泳ごう!」
「今行けない」
「どうして?」
「胸がいっぱいで……」

頑張る子ども◎

原作は子供の頃から知ってたけど未読で、この作品も実は随分前に一度借りてたっぽい…点子が地下鉄で踊るシーンで思い出した…けど全く内容覚えてなかったし、新鮮な気持ちで最鑑賞。

点子ちゃんとアントンは親友。
点子の家は、お金持ち。プール付きの豪邸に住んでいる。パパが心臓医でママは慈善事業に忙しい。でも両親ともに仕事が忙しいのか、ほとんど家におらず、寂しい毎日。メイドのおばあさんとフランス人の家庭教師だけが心の支え。勝気で生意気な性格のためか、学校ではアントンしか友達がおらず、度々男の子にいじめられる。
かたやアントンは、体を壊して寝ているママと狭いアパートで二人暮らし。クールな性格で、ケンカも強い。学校の成績は優秀で運動神経も抜群なのだけど、仕事を休んでいるママの代わりにアイス屋でバイトしているため、最近授業で寝てばかり。プライドも高く、ママの仕事を守るためもあり、寝不足の理由が言えない。

そんな2人が巻き起こす騒動。
大人は激しく振り回されるけど、真っ直ぐにぶつかってくる子どもの叫びに、自分たちの姿勢を思わず顧みる。

仕事ばかりして家にいないのは、お前に良い暮らしをさせてやるため。親が仕事を頑張るのは全て子供のためと言うが、結局は親自身のエゴである。貧しさと豊かさ、どちらも経験して、子供は自らの生活について考える。だけど、どちらかしか経験してない子供には、「親と一緒にいること」はたまた「お金を稼ぐこと」頑固で偏った考えが生まれてしまうもの。
私もその昔、狭くて小さな家に家族4人で住んでいた。どれだけ狭くても、家は家。
傾斜の急な階段から弟が落ちて大怪我したり、家がもので溢れかえったり、大変な生活だったけど、家の狭いベランダにビニールプール出したり、家族4人川の字で寝たり、なんだかんだ楽しい思い出がたくさんあって。
もっと働いて、もっと大きな家に住むぞ!と父親が建ててくれた新しい家。
引っ越してからは両親はケンカばかりだった。ある日父親が家を出ていった。前に住んでた家に戻りたいな…って思ったこと、何回もあるし、あの家にいまだれが住んでるのか、と、思い及んで電車に乗って見に行ったこともある。

私の父親は自営業で母親も主婦だったし、小さい頃は割と両親と過ごした思い出があるけど、点子のように、親が家にほとんどいない環境って、どうなんだろう…って考える。何かあればたてついたり食ってかかる点子は鼻につく子供だけど、彼女はめちゃくちゃ愛情に飢えていて、唯一の友達であるアントンを何とか助けようと、あの手この手模索する。点子が周りの人を見る眼差しや言動を見ていると、彼女のような子どもが、結局親からの愛情を感じずに育った結果は、めちゃくちゃメンヘラになる未来が見えてしまうのだけど、理解のある賢い親で良かった…と思う。だからこそのラストの点子のあのセリフ。夢にまで見た光景だったんだろうな。冷めた目で見てたけど、涙出ちゃった。
ホント、アフリカの子供とばかり一緒にいないで、私と一緒にいてよ!だよね。子供はそんなもん。
だけど、ずっと家にいるのが辛い母親も、きっといる。。そんな時、母親サイドでなく父親サイドが歩み寄るのがこの作品。時代の先をいってる感じ。
冒頭、てっきり点子のママだと思ったフランス語家庭教師、ただのビッチと思いきやちゃんとした思いやりのある人間で良かった。

アントンのパパのくだりも切なかったな、、「俺に子どもはいない」って言われたら、心にくるよね…
授けてくれたことは感謝してる。元ダンナではなく、「アントンのパパ」としていつか紹介してくれたら、、とママの心の成長を願った。

いや地下鉄ってもっと恐ろしいところでは?とか、流石にあの警察通報のくだりは無理が…とか、ところどころツッコミどころはあれど、点子とアントン、両方のエピソードがバランス良く描かれていて、劇伴もほのぼのかわいく、良かった。
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