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点子ちゃんとアントンのemilyのレビュー・感想・評価

点子ちゃんとアントン(2000年製作の映画)
4.7
小学生の点子ちゃんとアントンは親友同士。点子ちゃんの家は裕福だが、父は医者の仕事が忙しく、母はボランティアの仕事で海外出張が多く家にほとんどいない。一方のアントンは母と二人暮らしでいつだって一緒だが、母が病気で仕事首にならないようにアントンが母の代わりに仕事へ行ってる。そのため最近は一緒に遊べないのがさみしい。そんな二人はお互いに見えないところで助け合い、唯一無二の友情関係を気づいていく。

 点子ちゃんとアントンの家は対照的である。子供同士が仲良くてもいつかその格差により離れ離れになってしまうのではないか?と考えるのは大人の勝手な理屈なのである。子供が望むのはいっぱいのプレゼントや、お金で買えるものではない。いつもそばにいて子供を愛してくれることなのだ。そんなこと大人だってわかってる。しかしその愛情の形をはき違えてしまった大人たちは二人の純粋な思いに触れて成長していくのだ。

 二人は素直にお互いのために力になりたいと思う。その行動には駆け引きが全くなく、ただやりたいからやっているのだ。当然見返りを求める訳でもお礼の言葉がほしい訳でもない。ただアントンが、点子ちゃんが笑ってくれればそれで幸せなのだ。二人で買い物に行くシーン、点子ちゃんが地下のお菓子屋さんの前で路上ライブして小銭を稼いでるシーン、周りの人たちがパーカッションやアコーディオンを弾き始め、ダンスし始めるたり、家政婦さんたちの演劇、アントンとお母さんの影絵芝居、すべてが笑顔に満ち溢れていて、みずみずしくきらびやかである。寄り添う音楽も陽気で、見てるだけでその元気が、その笑顔が感染してくるのだ。

 子供はいつだって親の犠牲になってしまうけど、それでも二人はめげない。大人にも立ち向かい、正しいことを声にだして正しいという。間違ってることをしっかり間違ってるという。両親はいつも喧嘩してるが、点子ちゃんがまっすぐな子に育ったのは、家庭教師や家政婦さんがいつも無心の愛を注いでいたからである。悪ガキたちの処理の仕方もユーモアがあってすっきり爽快感を残し、見終わった後はほんのり涙とともに、幸せな気分だけ残してくれる。

 いつだって大人は子供からたくさんの事を学ぶ。点子ちゃんの最後の言葉がいつまでも続くように、守っていく必要がある。そうして彼女も大人になれば大人の苦労もわかるときが来るだろう。でも今はその時ではない。子供でいるのなんてほんの一瞬だ。あっという間に成長し大きくなってしまう。だからこそ今この瞬間の子供の世界を見守り続ける必要がある。
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