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点子ちゃんとアントンのhokoのレビュー・感想・評価

点子ちゃんとアントン(2000年製作の映画)
4.8
古い映画ですが、こちらも個人的に思い入れの強い映画で、客観的評価がむずかしい!
私にとっては何度でも蓋を開けてみたくなる、かわいい宝物みたいな映画です。

この作品に漂う空気感が本当に好きです。
穏やかで、楽しくて、心地いい風が吹くような。
夏の夜の湿度や温度、パスタのいい匂いがして、太陽に干したリネンみたいに柔らかく、アイスクリームの甘さと、ほろ苦いコーヒーの味がする。
まるでそれぞれのシーンに香りや温度があるようで、頭に焼き付いて離れない。

原作は、ナチス政権下に生きたドイツの児童文学者エーリッヒ・ケストナーによる小説。
彼の作品は、子供たちが明るく逞しく生きる様子を描いたものが多いのが印象的。

点子ちゃんとアントンはいつも仲良しの親友だけど、家族や家庭に関して、互いに反対の境遇を持つ。
裕福な家庭に育った点子ちゃんは、何不自由ない生活とは裏腹に、多忙な両親と充分な時間を過ごせず寂しい思いを抱える。
アントンはというと、身寄りは母親一人で、病気の母親を助けようとアイスクリーム店でこっそり働く毎日。子供一人では充分な生活費を稼げるはずもなく、生活は困窮するわけだが、それでも母親の沢山の愛情に包まれ、穏やかな毎日を過ごしている。

本当の意味で恵まれているのはどちらなのか、明確な答えを出すのはいつでも難しいですが、少なくとも2人は持たざる事に対して卑屈にはならないし、互いを羨む事はあっても、妬むような事はしません。
状況を打開しようと彼らなりに助け合い、努力する。
嬉しい時や楽しい時は大いに笑い、悲しい時は素直に悲しみ、寂しいと全身で訴える。
真っ直ぐで素直な2人は、大人が忘れてしまった何かを思い出させてくれるようでした。

点子ちゃんの母親の変化に関しては都合が良すぎる所もありますけどね。
それでも大好きな映画なのです。

2人のファッションも最高にかわいくて、そこもおすすめポイントです。
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