LalaーMukuーMerry

点子ちゃんとアントンのLalaーMukuーMerryのレビュー・感想・評価

点子ちゃんとアントン(2000年製作の映画)
4.4
ドイツの10歳の仲良しクラスメイト、点子(ニックネーム)とアントン。二人と、二人をとりまく周囲の大人たちのお話。「子どもが主役でいい感じ」の映画に速攻で入れました。音楽も可愛らしいし、とてもいいエンディングでした。
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「二人のロッテ」、「エミールと探偵たち」で知られる(といっても私は読んでませんが)児童文学作家エーリッヒ・ケストナーの原作(1931)を映画化した2000年の作品。
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母子家庭の貧しい暮らしのアントンは、病気で寝込んでしまった母親のかわりに店(アイスクリーム・カフェ)でバイトをするという(児童労働で違法だけどね)、母想いのとても優しい男の子。
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点子の方は心臓外科医の父と慈善活動家の母をもつ裕福な家の一人娘。でも家にほとんどいない両親(特に母親)のかわりを、家政婦のおばさんと家庭教師のフランス人のお姉さんがしているようなもの。ちょっと母親の愛情に飢えたおてんば。
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・前半の事件は、アントンの父親探しの冒険。ちょっと切ない(でも当然の)結末。
・頑張っているアントンのために、自分のできることで力になろうと、点子は夜の秘密の活動を開始。けれど、アントンの犯した間違いが原因で、二人の母親どうしは険悪な関係に。
・そんな中、(両親がオペラ鑑賞に出かけて)留守の点子の邸に入ろうとした泥棒の情報を、アントンが警察(と家政婦のおばさん)に通報したことで、事件は未然に解決。アントンも名誉回復…
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ユーモアある演出や、影絵やダンスシーンもとても印象的。純真で可愛らしい二人の友情が光ってました。二人の親たちがこどものおかげで、仲たがいから和解するというストーリーもいいと思う。点子の母親があんな風になった原因の一端は夫にもあることに彼自身が気づいて態度を改める(仕事を減らして家にいる時間を増やす)というところも現代風アレンジの評価できるポイントでしょう。
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~ 子どもの頃の小さな思い出 その(1)~
わたしが小学校高学年の時、低学年だけど抜群に運動神経が良くて、高学年の私たちが手加減する必要も感じずに一緒に遊べるスーパー低学年の男の子Y君がいた。ある日、砂利石を投げ合って戦争ごっこのような遊びをしていた時、私の投げた砂利石がまっすぐ飛んで彼のおでこに命中した。急にうずくまってしまった彼に駆け寄ったとき、私は動揺した。おでこを押さえたかれの手の指の間から赤い血がたくさん流れ出ていたから。彼は、ほどなく立ち上がって家に走って帰っていった。遊びは急におしまい・・・
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その日の夕食時、元気のない私を見て母親が何かあったのかと聞いてきた。事情を話すと、いっしょに謝りに行こうと言ってくれた。彼の家の玄関で母が一緒に謝ってくれたおかげで、大ごとにならずに赦してもらえた。(母親どうしで話が済んで、彼の様子はよくわからなかったけど)
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それから時はたち、私の子供たちは悪さをすることもなく育ってくれたので、私はよその親に謝りにいくということをせずにすんだのだけれど、親が自分の子のことでよその親に謝りにいくのは、かなり勇気がいることだと思う。この映画を見てウン十年も前の忘れていたことが何故か思い出された。
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その後、Y君とは会ってないが、風の便りに体育の先生になったと聞いた。彼は忘れているかもしれないが、加害者となってしまったあの時の心の傷は消え去ることはないのだろう。
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~ 子どもの頃の小さな思い出 その(2)~
わたしが、アントンと同じくらいの少年だった頃のこと。1つ年下のS君は、お互いの家によく行って一緒に遊ぶ仲良しの友達だった。彼が私の家にやってきて家の前で二人で遊んでいた時、近所に住む親戚のお姉さんがカメラを持ってやってきて、一緒に親戚の集合写真を撮ろうということになった。家にいた大人たちがみんな出てきて前後2列に並んだその中にS君も入っていたのだが、ハイ・チーズの直前に、うちの母がこんなことを口にした。

「どうして、よその子が入っとるんじゃろ?」

空気が凍ったように感じた。
私はハッとして、S君を見ると、
彼の顔が急にくしゃくしゃになって
ワァーと泣きながら走り去っていった。

気まずい沈黙のあと、そのまま写真撮影。
私は母に対して、ものすごく憤りを感じた。
でも姉も大人たちも誰も何も言わなかった。

なんで誰も何も言わないんだ? おかしいじゃないか
そう思った私も心で叫んだだけだったから、結局大人たちと同じなのかもしれない。
S君に申し訳なかった…

この作品のルイーゼ(点子)は、友達想いで、母親が間違っていると堂々と言える芯の強い女の子です。
あの時の私とは違うな。

かすかな昔の記憶がよみがえりました。