チッコーネ

終電車の死美人のチッコーネのレビュー・感想・評価

終電車の死美人(1955年製作の映画)
3.5
「なぜ今まで網に引っかからなかったんだろう」と思う50年代佳作の場合、大抵は東映作品で、本作もその例に漏れず。
捜査に明け暮れる刑事たちの足取りをつぶさに追う、スリリングなサスペンスだった。
ロケ撮影が非常に多く、吉祥寺や三鷹に始まり、池袋や新宿、そして月島あたりの雑然とした、戦後10年以内の景観が楽しめる。

伊藤久哉や宇佐美淳あたりはわかるとして、小津や成瀬作品にも出演していた堀雄二が登場。
調べたところ彼は東宝ニューフェイスの一期生、三船様や久我様と同期だったことになる。
本作制作当時は大映所属だった様子なので借り受け、美形ではないものの、色気ある佇まいが魅力的。
ほかにも充てられた演出はハードなのに、サングラス姿のクローズアップばかりでやや気の毒な南原宏冶(『ゼロの焦点』で久我様の夫役)、山形勲、東野英二郎らも登場と、地味ながら味のあるキャスティング。
東野南原が同一線上で顔を合わせる、船着き場カットの奥行きある撮影がカッコ良かった。