Omizu

ハムレットのOmizuのレビュー・感想・評価

ハムレット(1964年製作の映画)
3.8
【第25回ヴェネツィア映画祭 審査員特別賞】
ソ連版ハムレットとして知る人ぞ知る秀作。英国アカデミー賞作品賞にノミネートされた他、日本でもキネマ旬報外国映画第10位に選出されている。

監督のコージンツェフはシェイクスピアの研究者でもあり、『ドクトル・ジバゴ』で有名なパステルナークの翻訳版を元に映画化した。

ローレンス・オリヴィエ版はハムレットの心に焦点を当てた作品であったのに対し、本作は政治的要素を目立たせているという。

ホラー、いやモンスター映画のような父王の亡霊登場シーンや、奇妙なオフィーリアの踊りなどなかなか独特で面白かった。

ロシアとエストニアの国境で撮影したという寒々とした景色と威圧的な城、画面構成の妙が光る。

ゴツゴツとした城がリアルであるが、全体像が映るシーンは全くない。様々な角度からの城が映されるため、まるで城自体が「多面的な人間の側面」を象徴しているかのようだ。

一方で最後のハムレットのセリフを省略しているため、フォーティンブラスの登場がいささか唐突に感じられるのが残念。

基本的には忠実でありつつ、独自の映像美学のあるなかなかの秀作。
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