ryosuke

ハムレットのryosukeのレビュー・感想・評価

ハムレット(1964年製作の映画)
4.6
@アテネフランセ
ドン・キホーテとハムレットは何やらツルゲーネフが示した二つの人物類型の典型であるらしい。コージンツェフはどちらもやりたかったのだろうか。
流麗なカメラワークの長回しで捉えられる、光と影の調整された重厚な映像が美しい。
画面はかなり暗く、その中で輝く光が美しいので劇場で見たい作品。
内容面も画面も暗く、どっしりとした作りなので「ニーチェの馬」を見た時と同じような疲労感がある。
ショスタコーヴィチの荘厳な音楽も映像とぴったり合っている。
ハムレットの皮肉なセリフを代表として、やはり表現は美しいのだが、どれぐらい原作に忠実なのだろうか。
黒煙にかき消されて移り変わるスタッフロールも洒落ている。「ドン・キホーテ」でも回転する風車の羽にスタッフロールを遮らせて転換していた。細かいところに遊び心があるのは嬉しい。
月明りに照らされる父の亡霊は鮮烈。夜風に揺れるマントが幻想的。
水の描写も美しく印象に残る。冒頭の禍々しいモノクロの海(若干スローモーションになっている)、霧がかった池の静謐な水面等。
船上での揺れる炎と影も美しい。「アルファヴィル」見た時も思ったがこれは本当に映画的な表現だと思う。
墓場シーンのショットもばっちり構図がキマッている。このシーンも含めて全体的に背景となる空に登場人物の心情が投影されている。
荒々しい自然が印象的に用いられ、ロケーションは本作の重要な魅力の一つとなっている。
王が鏡に映った自分に嫌悪感を示すことで罪悪感と恐れを表現するシーンも記憶に残る。先のシーンの鏡に向かっての独白が効いてくる。
ryosuke

ryosuke