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天の夕顔のseapony3000のレビュー・感想・評価

天の夕顔(1948年製作の映画)
5.0
自殺未遂で雪山に倒れる田中春男ちゃん、みたことないくらいの耽美っぷり。助けた山小屋暮らしのタツノクチさん、わたしとあなた大学は京都と東京、じゃあお話していいですね…って春男ちゃんの身の上話聞いてあげるのかと思いきや自分の恋バナしはじめるタツノクチさん→藤川豊彦さんという美男子はじめてみた主演作(すぐ俳優引退して実業家になったらしい📝)。貸してくれる本はアンナカレーニナにボヴァリー夫人で思わせぶりすごいし、挟まってる文章が達筆すぎて読めません。恋した女は妻子持ちの高峰三枝子、夫はパリから永遠に帰ってこないつーのに、逢うたび好き別れるを三枝子側から言い渡される生殺しのタツノクチさん、これぞじらしの美学って感じの焦らしに焦らした演出にこっちのマゾっ気もマックス。読めないといえば三枝子が和尚からもらった書もたびたび出てくるけどこれもやっぱり達筆で読めない。それでも夕顔咲く丘のシーン美しすぎる。東京出てきたらもちろんニコライ堂バックに聖橋でばったり遭遇、ミルクセーキ美味しそう。何十年にも渡って度重なるお預けくらうタツノクチさんは山小屋の木に丸いランプぶら下げて猟銃の弾命中したら即自殺します、のお手紙送りつけ。雪のなか燃える情熱の炎。三枝子の息子も察しがいいけど時は遅し。自制と忍耐にがんじがらめの美徳を命がけで貫く三枝子夫人もまんまと振り回されるタツノクチさんも最高。雲間から差し込む陽、三枝子の死に顔も浮世離れした美しさ。自分はどうしようもないダメな男だったとか長い独白しながら三枝子に打ち上げる花火。いいものみたなー。
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