Ricola

地球の静止する日のRicolaのネタバレレビュー・内容・結末

地球の静止する日(1951年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

人間らしき目元が見える、人間に近い風貌の宇宙人からの鉛の塊でできたロボットが登場して、ビームを浴びせる。
そんなロボットが人類に注意喚起を促す…という設定はSF映画あるあるだが、それに加えて宇宙人と純粋な子供との友情や冷戦時代の背景を汲むアメリカ史もうかがえるような点が、この作品の特徴と言えるのではないだろうか。


人々は逃げ惑い恐れ、宇宙人に武器を向ける。地球全生命の危機をただ彼は親切に伝えに来ただけなのに、人間は得体のしれない未知のものを知ろうとすることなく、ただ恐れ騒ぐだけである。そんな様子が滑稽かつおどろおどろしく描かれる。

少年が宇宙人にワシントンを案内する。
第二次世界大戦の死者の墓地やリンカーン大統領の像から、原子エネルギーと爆弾の話へと繋がる。
人類の争いの歴史と表裏一体にある平和への渇望が、街の遺産から見出されるのだ。

人間の形をした宇宙人の神秘性を影が表す。
宇宙人が医者と話す際、二人が画面に収まっているショットではどちらか一方が常に影に覆われている。
さらに彼が少年の家族のもとに初めて現れた際にも、彼の全身のシルエットが浮かび上がるだけで顔はなかなか明らかにならない。
この影を操る演出は、宇宙人の訪問が人々の恐怖心をどれほど煽っているのかを示すというよりも、元々人類が漠然と抱いている不安を宇宙人の訪れという警告が後押ししている、というほうがしっくりくるのではないか。

そんな宇宙人が、全世界の代表者たち(知識人)が集まる中で演説をする意義とはなんだろうか。
争いのない世界の重要性と地球の危機に対する警告を、地球人たちに告げる。
戦後間もないにも関わらず、いつまた大きな戦争が起こるかわからない世界情勢の最中の時代で、地球を傍観する者にシリアスに諭させる作品を送り出すことが、世間に対する重要かつ効果的な問題提起となったのかもしれない。
Ricola

Ricola