Omizu

寝盗られ宗介のOmizuのレビュー・感想・評価

寝盗られ宗介(1992年製作の映画)
3.7
【1992年キネマ旬報日本映画ベストテン 第8位】
『キャタピラー』若松孝二監督がつかこうへい原作舞台を映画化した作品。原田芳雄、藤谷美和子、筧利夫らが出演した喜劇。

初若松孝二がこれでよかったのかは分からないが、テンポよくみられる良質喜劇だった。原田芳雄はよくこんな役やったなぁ…女を何度も寝取られるは女装して歌わされるは…

一座を率いる原田芳雄演じる座長宗介は藤谷美和子演じるレイ子と内縁の夫婦状態であるが、レイ子は何度も間男をこさえ駆け落ちする。しかし宗介はレイ子は結局は帰ってくることを知っていた…

まず北村宗介一座の出し物がバカバカしい。エセこまどり姉妹や美空ひばりの娘、越路吹雪の隠し子などありもしないものをでっち上げて全国を回る。そこそこ受けてるのが面白い。

宗介とレイ子が何度も別れながら結婚というゴールに向かっていく過程をテンポよく描いている。美術や衣装もあえて安っぽく鮮やかでいい。

原田芳雄の表情の演技が素晴らしい。座員のことを第一に考える厳しくもお人好しな宗介をコミカルに演じていた。絶対に適合しないだろうと思って出てきたら「きれいな腎臓です」と言われたときの複雑な顔が最高。

ジミーにレイ子を寝取られたシーンではあまりに舞台っぽすぎるのは気になったが演技がいい。最後のオチもリアリティはないけど、いきなり富士山が映るのがびっくりしたし上手い。これは映画でないとできない演出だ。

藤谷美和子の憎めなさもよかったし、すぐ泣く外国人のマークもよかった。ジミーは座長好き好きって言っていて明らかにゲイなのにレイ子と駆け落ちするのはよく分からなかったけどキャラクター自体はいいと思う。柴田理恵はいつものコメディエンヌっぷりで最高。

笑って泣ける良質喜劇。ソフトがあまり出回っていないし配信もないので観づらいけど、コメディが好きな人は十分楽しめる一作では。
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