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皆殺しの天使のzkのレビュー・感想・評価

皆殺しの天使(1962年製作の映画)
2.8
タイトルといいクローズドサークルな状況といい、私もそうだが現代人ならまず密室ホラーを期待しそうだが本作はそもそもエンタメではなかった。
シュール系である。娯楽を期待して観たせいで退屈と戦いながらの鑑賞となった。

映画的に感じた事を記すと、本作は上流階級の退廃と孤立が題材なのだろう。
そこ(現在の彼らのおいしい階級)から出ようと思えば出られるのに出られない。一般市民は彼らの空間に入ろうと思えば入れるはずなのに入りたがらない、という分断を描いている。
豊かな暮らしに受け身で浸りきった人達には行動様式だけが残り自由意志などというものは消え去ってしまった。

それを極端な形で表現したシュール作品というわけだ。

夜会主催者は形骸化した行動のみしか取れない上流階級なので、同じ上流階級に向かって「お引取りください」とはどうしても言えない。
一方夜会の客も同様なので主催者に「帰れ」と言われない限り帰るのが礼を欠く気がして帰る事ができない。だから中盤で「最悪のホスト」みたいに言って主催者を責めたのだ。何故「帰れ」と言ってくれないんだ、と。

正直現代で表現すると、不完全なAI同士の行動がバグりました。の一言の物語である。
当事者は真剣なのでシュールコメディと言えなくもないが、その状況からのひとひねりが存在しないのは制作年代から言ってしかたないのだろう。
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