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皆殺しの天使のadeamのレビュー・感想・評価

皆殺しの天使(1962年製作の映画)
3.0
ブニュエルにとってダリと共作したシュールレアリストとしての初期作品と、晩年のフランスでの人を食ったような作風との中間地点でその橋渡しをするような不条理劇の傑作。
晩餐会にやって来た上流階級の人々が、何ら物理的な拘束はないにも関わらず、何日も屋敷から帰れなくなってしまう物語です。
着飾った人々がいちいち見た目を気にしながら、まるで雪山や無人島で遭難したかのようにヒステリーを起こしていく姿が滑稽に描かれます。
普段は召使い達に偉そうに指図していても、彼らがいなくなった途端にサバイバル能力の低さが露呈する様にはブニュエルらしいブラックユーモアが詰まっていました。
本作の系譜に連なる「ブルジョワジーの秘かな愉しみ」と比べると、こちらの方がシリアスで迫力に優る一方で、よりユーモラスなあちらの方が完全に小馬鹿にしている感じで皮肉としては鋭かった気がしました。
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