大道幸之丞

ジェイコブス・ラダーの大道幸之丞のネタバレレビュー・内容・結末

ジェイコブス・ラダー(1990年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

カテゴリは「タクシードライバー」などのいわゆる「ベトナム戦争帰還兵PTSDモノ」になる。

今回は「実際にあった」と噂されている薬物による戦意向上とその後の幻覚を伴う副作用を物語の告発を土台に据えている。

実は私はリメイクを観た直後にこのオリジナルを観たが、雲泥の差だと思う。

同じ「家族」をテーマにしているが、本作は別居中の妻と4人の子どもたちと亡くなった男の子ゲイブとの幸福だった頃の思い出、しかしベトナムから帰還後は郵便局で同僚だったジェジーと同棲しているがこれらを回想していく

この辺の幻覚から現実と想像と記憶が混濁する有様はこちらにも「こういう感じわかるよなあ」と思わせるリアルさがある。政府機関から付け狙われる様子も怖さをうまく表現出来ている。

そしてこの作品の真骨頂は散々2時間近く自身と家族の苦しくも幸福な日々と、帰還後の奇妙な出来事などを描いておきながら実はその一切がベトナムで負傷し、戦場医療所のベットで息絶えるまで観たただの夢想であったというオチだろう——あまりに哀しすぎる。

本来小説の世界でも「夢オチ」か固く禁じられるものだが、本作ではこのエンディングは成立している。

「ショーシャンクの空に」では冤罪を着せられた誇り高きアンディを演じたティム・ロビンスが、一庶民として戦争にも行った役柄を演じているのも成功している。