シートン

チャイナタウンのシートンのレビュー・感想・評価

チャイナタウン(1974年製作の映画)
4.0
フィルム・ノワールというジャンル、あるいはそのパターンを踏襲しながらも、その枠のなかで政治的文脈と個人的な問題とを接続し単なるサスペンスあるいは探偵モノというにとどまらない深みがある。

実際に起きた事件に取材している面もあるようだが、その社会的・政治的背景の生々しさには冷たいリアリティがある。ここでいう社会的背景とは、土木産業の腐敗や、砂漠化だけでなく、中華系の人々が白人の豪邸で使用人として雇われていたり、彼らの居住地が治安の悪い薄暗い場所として描かれたりしている点である。主人公の不遇な下積み時代とラストシーンの悲劇の舞台となる「チャイナタウン」は、くっきりとした人種による区画割がなされ、公然たる民族的格差を示していた。

映像の作りもあえて主人公の肩越しに――主人公の背が画面の右下を覆うように――撮られているシーンが特徴的である。画面が、主人公の視界を再現するように構成されている点が興味深い。緻密な構成、スリリングな展開、主題の深化という点に、感銘を受けた
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