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チャイナタウンのnagarebosiのレビュー・感想・評価

チャイナタウン(1974年製作の映画)
4.8
これが完全オリジナルの脚本とは!
これぞハードボイルド!って感じです。
とにかく素晴らしい。
原作無しのオリジナル脚本を書いたロバート・タウンはきっと、探偵物を読み漁ったのでしょう。まるで、良くできたハードボイルド小説を1ページずつ読んでいるかの如く展開していくストーリーは、ただただ圧巻!
ハードボイルド、フィルムノワールの風味を活かした監督の手腕は細部にまで手を抜かず、30年代の雰囲気や気怠さを見事に活写。撮影や照明が映画的でありながら、70年代らしさのあるニューシネマの薫りが現在の映画にはない、どこか退廃的で独特な雰囲気。ギデスのスーツにハンカチーフや出てくる車、当時の街並み、モウレーのバッチリ決めた髪型やファッションなど、当時を徹底的に再現しようと制作側の意気込みが感じられます。なんでもニコルソンさんは撮影終了時に衣装を貰った(買い取った?)ほど。ゴールドスミスの音楽は僅か数日で作り上げたとは思えないほど、これらのイメージやシーンにピタリとハマっています。
ニコルソンさんの私立探偵役は小説なら数十ページでも書き足りないほど複雑なキャラクターを一見キザに、でもトコトン真相を追い求める情に溢れた優しいキャラクターに命を吹き込み見事。ニヒルでありながら実は熱い男をクールに演じてます。ダナウェイさんの一見クールビューティーでありながら、どこか謎めいていつつも悲しい過去を背負っている陰のある女性からの依頼なら、そりゃ守りたくなります。狼狽える姿、重大な告白をする表情等、表面ではない裏の顔を見てしまったとき、ギデスと同じく私も動揺してしまいました。
ラスト、「チャイナタウンだよ」と言われた時の虚無感、とでもいいますか、あれは「だよなぁ…」と同時に「やられた!」と舌を巻くほどハードボイルドな台詞。

全編セピアがかった映像で苦い結末、これぞ一級品!