延々と歩く

死霊のえじきの延々と歩くのレビュー・感想・評価

死霊のえじき(1985年製作の映画)
2.9
 ジョージ・A・ロメロ監督による「ゾンビ三部作」の最終章。

 人間とはゾンビが踊り食いするためのもの、という世界観のスプラッター映画は苦手じゃないけどすすんでみる感じでもなく、ゾンビハザード世界に閉じ込められた生存者たちのギスギス人間ドラマとなると余計に手が伸びない。

 まあロメロ監督の有名作なら要チェックやけどさ。子どものころ本作のメイキングをテレビでやっててゾンビのはらわたドバーッ!で度肝を抜かれた記憶もある。

 79年の名作「ゾンビ」と同じくダリオ・アルジェントの助けを借りる予定だったのがヨーロッパに対するドル高?みたいなので消滅、作品規模が大きいといって制作会社も難色を示し「750万ドルでR指定作品にするか、350万ドルでレイティングを気にせずに撮るか」と問われて後者を選んだという。

 制作された85年は1ドル=200円と出るから、750万ドルで15億円ほどか。350万ドルは7億円。750でぎりぎりメジャー、350ならインディ映画、という扱いだろうか。

 予算の問題から脚本はかなり変更された。ロメロとの仕事で有名な特殊メイクスタッフ兼役者のトム・サヴィーニによると元のお話は「ゾンビ版『インディ・ジョーンズ』」だったそうだけど、ホンマかいな。ブルーレイのおまけに初稿脚本がついていて、読んだ人はロメロが20年後につくる「ランド・オブ・ザ・デッド」っぽいという。

 本作自体は上述したように低予算を選んでも自由に撮っているから、残酷描写や雰囲気もハードコアにまとまっている。そしてそのガチな仕上がりがヘナチョコ映画ファンにはちょっとしんどい。スタッフが役者もかねる独立系しぐさもなんか堅苦しくて、三部作中の「リビング・デッド」「ゾンビ」ほど効果的でない。

 必見作には間違いないけどそこまで乗れず、という感じだった。やっぱロメロは頑張ってるけど技術的にそこまでグロくできなかった「ゾンビ」とか、集大成にしてメジャー級スター多数出演の「ランド・オブ・ザ・デッド」の取っつきやすさが好き。
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