片腕マシンボーイ

死霊のえじきの片腕マシンボーイのレビュー・感想・評価

死霊のえじき(1985年製作の映画)
3.5
ポンコツ映画の鑑賞ばかりでは脳ミソが溶けだしてしまう
名作を欲し鑑賞
こういう時は黒澤明かビリー・ワイルダーかジョージ・A・ロメロ観とけば間違いなしな!

パンデミック後の世界
地下に潜って生きる軍人や科学者達がワチャワチャすんよ!って話

ゾンビ愛好家として言わせて貰えばゾンビを堪能したければ「ウォーキングデッド」を長々と観なくともロメロの3部作観ておけば全てが凝縮されております
(あ、でも「ウォーキングデッド」はシーズン2まで観て飽きてやめたクチなんで、それ以降の展開は知らないゾンビ愛好家の戯言と聞き流していただいても結構です)

ちなみに3部作の個人的に好き順では本作は2番
1番は1作目の「ナイトオブザリビングデッド」、3番が2作目の「ゾンビ」

そして3作目の本作の最大の魅力はやはりゾンビ界のスーパースター、バブちゃんとキチガイ博士のほのぼのとした親子関係ではないでしょうか
ゾンビに歯ブラシや髭剃り、電話を渡し人間であった頃の記憶を呼び覚まし人間的な行動をさせようじゃないか!という博士の研究は軍人達の反感を買うが
成果は素晴らしく、単なる反復行動ではなくゾンビの眠っていた知性までも呼び起こすことになる
自分を守り倒れた博士を前に涙は流れない代わりに苦しげな唸り声をあげるバブちゃんの姿には無い胸が締め付けられる

しかし軍人共の肩を持つわけではないがゾンビが知性を持つ、人間とゾンビが共に暮らすというのも滑稽な話であり
まだ鮮度の高い脳味噌を持つバブちゃんだから多少の成果が得られたワケであって
やがて腐り尽くす彼等への教育はナンセンスなのではなかろうか?
そもそもゾンビとはそんな単純な存在ではないのではないか?

敵の敵は味方なんて言葉もあるがゾンビが人を喰らう終末世界の仕組みはそう簡単なモノではなく
ゾンビという最大の敵を前にしながら、それでも人間は身内同士でエゴをぶつけ合い醜く争い合う
ゾンビ映画では見慣れた光景
やがて、防波堤が決壊し押し寄せるゾンビの波を前になす術なく押し流される人間
ゾンビはただただ本能のままに欲に塗れた人間を希望ごと喰らい尽くす
愛する者に突然噛み殺され、自分もまた愛する者を本能のままに貪り食う地獄絵図
やがて人は姿を消し残されたゾンビも腐敗が進みやがて土に還り人間の名残は地球から消滅する
ゾンビが人間しか襲わないのも自然の摂理
ゾンビパンデミックは互いに啀み合い自然をバックから犯し続けた欲望の化身である人間に対する断罪

地球のどこかでひとり人間がゾンビと化した時点でもう人間には逃げ場などなく地下に密もうがショッピングモールに篭ろうが、もちろんパブでビールを飲みながら助けをまとうが逃げ場などなく
最後の1人が自然に還り欲も愛も希望も全てが消え失せるまで人喰いの連鎖は止まらない

2016年、今年は人間に審判が下されることはなく終わりそうだ
2017年、果たして来年、人は人であり続けることができるのか?
とりあえずパンデミックは「蠱毒ミートボールマシン」の公開後にしてください!