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死霊のえじきのStroszekのネタバレレビュー・内容・結末

死霊のえじき(1985年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

1985年アメリカ。Night of the Living Dead(1968)、Dawn of the Dead(1978)に続くゾンビ・トリロジーの三作目。フロリダ州のゾンビ研究シェルターで、研究者と軍人が対立を深めていく。極限下に置かれた人々の心理を描く。“Hello! Is anyone there?”という呼びかけから始まるのだが、答えるのが全員ゾンビ。冒頭、ヒロインのサラが白い部屋に閉じ込められている姿に、閉塞感がよく表れている。無線ボーイのビリーが「ショッピングセンターも閉鎖だ」と言うのだが、前作への言及か。シェルターでは、ローガン博士(通称フランケンシュタイン博士)がゾンビ研究をしているのだが、彼の解剖手術の方が、ゾンビの本能に従った人肉食よりも怖い。 ゾンビ発生の理由については、「人間が答えを出すことじゃない」と言い、神の意志に理由を求める思索的なヘリボーイ、ジョン。終盤地上へ登る梯子に足をかけ、このまま死ぬべきか脱出すべきか迷う表情を見せるのも彼であるが、三部作全体でサバイバルのキーとなるのが黒人の登場人物で一貫していることに気づかされる。「死人を生かし続けている。存在させ続けている」という矛盾に笑うローガン博士。“Salem’s Lot” (Stephen King)をバブに読ませ、クラシック音楽を聴かせて、ゾンビを文明化しようとする。そんな誰よりも明晰に見えた博士が、狂っていたと分かる瞬間が恐ろしい。ロケーションについて言及しておくと、地下施設の活用ぶりが素晴らしい。洞窟でゾンビを退治しつつ地上への脱出を目指すシーンは構図がビシバシきまっている(スコップで半分になったゾンビの顔のアップの背後に、ジョンが駆け出す姿が小さく見えるなど)。ビリーがジョンに言う台詞、“Fly us to the promised land.”は、アメリカ建国を思い出させる。「ゾンビの寿命は10-12年」「脳と四肢だけで動いている」など、愛情をもってゾンビ研究に身を捧げたローガン博士の姿にロメロを見た。【コメンタリー】冒頭、ハロウィンから始まることを指摘している。フロリダ州のシーンから始まるのだが、キャストは全員ディズニーランドに行きたがったらしい。お金や新聞紙がゾンビしかいない街に舞っているのだが、Resident Evil(『バイオハザード』, 2002年, ポール・W・S・アンダーソン監督)でも、同じ新聞紙が使われていたらしい。冒頭と終盤の地上ロケはフロリダで、地下シェルターへ降りてからはピッツバーグ近郊の施設でロケが行われたとのこと。ゾンビの造形の変化については、Dawn-では全員グレイだったが、Dayでは色を変えて、死期や人種が違うのを分かるようにしているらしい。サラ役のロリ・カーディルが8年生のとき、父親が“Night of the Living Dead”に出演していた。「『エイリアン』(2のこと?)のシガニー・ウィーヴァーより前に強い女を描いた」とロリに言われ、ロメロは「バーバラ(Night-のヒロイン)の間違いを償いたかった」と言っていた。ロメロによると、NOTLD=は公民権運動や、ヴェトナム戦争、“racial riot”といった、60年代の怒りの反映とのこと。「できあがったばかりの『NOTLD』を上映してくれる人を探してピッツバーグから運んでいるとき、マーティン・ルーサー・キングが暗殺された」。“Dawn-”は、「誰もが金持ちになり、幸せにならなければならないと考えていた「消費者社会」(“Consumer society”)の反映であり、モールはその象徴である。それならば“Day-”は、それまでマジョリティだった人々が、別の人種の台頭により、マイノリティになっていく過程を表していたのだろうか。「軍人役の人も全員一回はゾンビ役をやった」らしい。ロリ・カーディルの兄も、「ハロウィンのためにメイクアップを落とさないよう頼んでいた」し、スタッフの兄弟がマシンガンで撃たれているシーンがある。ゾンビになるために、みんな喜んで集まったのだろう。凄く楽しそうな雰囲気が伝わってくる。とりあえず、バブに敬礼!100分。

[鑑賞メーターから転載]

1985年米。ゾンビ・トリロジー完結編。フロリダ州の地下シェルターでゾンビ・バイオロジーの研究を行う科学者集団と、そのサポートをする軍人の対立。ゾンビ対人間の比率「40万対1」の状況に置かれた人々の心理と行動を描く。前二作と同じく、周囲をゾンビに囲まれた人間達を描いた室内劇の比重が重い。「ゾンビは我々の延長」であり、断絶していないという考え方のもと、彼らを飼い馴らそうとするローガン博士とバブの関係が見所か。極限下では、ヘリを飛ばす技術のある人間の命が最も重いらしい。三部作のとても納得のいく結末。
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